◆ 遺伝子組み換え生物の漏洩を破壊する為の”キルスイッチ”が開発される(米研究)

遺伝子組換え生物(GMO)の技術は、さまざまな状況への耐性を身につけた作物や成長が早い魚を作り出せるなど、使い方次第では有用な技術である。
しかし同時に脅威でもある。

万が一、素早く繁殖し、しかも強い細菌が研究室から漏れ出してしまったら、それを食い止める手立てはあるのだろうか?
これに対する解決策が「自己破壊DNA」だ。

■ キルスイッチを発動させ漏洩した生物の細胞と遺伝情報を破壊

『Nature Communications』に掲載された論文によると、それは対象となる生物が指定エリアから外に出た場合、最先端の遺伝子編集ツールでDNAを消去して、細胞と遺伝情報を破壊する。
このいわゆる”キルスイッチ”を発動させれば、実験生物や独占所有される生物が自然環境に侵入する前にそれを根絶することが可能になる。

■ アミノ酸を利用した合成生物の破壊

GMOの利用がますます広まりつつある今日、その封じ込め技術に対する関心が高まっている。
ハーバード大学の研究グループが発表したシステムは、アミノ酸をその目的で応用するものだ。

同システムでは、特定のアミノ酸を利用できない合成生物は細胞が死ぬようにする。
そして、そのアミノ酸を対象を封じ込めたいエリアにだけ配置する。
こうしておけば、万が一、対象が漏出してしまったとしても、アミノ酸が使えないために死んでしまう。

同システムはさらにDNA自体も標的にする。
細胞が死ぬだけでなく、対象の設計図である遺伝情報まで跡形もなく破壊するのだ。

■ 改変した部分だけ消去するという使用方法も

これはGMOの遺伝子を機密事項としている企業に特に有用だろう。
このシステムならDNAの特定の部分を標的とすることもできるため、改変した部分だけ消去するといった使い方もある。

このような精度はCRISPRという遺伝子編集ツールによって実現された。
最近のバイオテクノロジー関連で最も成果を上げている新技術の1つであるCRISPRは、自然発生する分子の集合であり、DNAの一部を切断して置き換えることができる。

キルスイッチシステムはCRISPRのDNA削除機能に着目したものだ。
大腸菌での実験では、アラビノースという糖分子に接触すると、CRISPRが発動し、大腸菌が持つDNAの特定の部分が削除されるようにした。
この結果、アラビノースが加わってから2時間でキルスイッチが発動し、15分以内に99パーセントの細胞が死んだ。

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■ まだまだ研究が必要なキルスイッチ

現在のバージョンは概念実証でしかない。
アラビノースが採用されたのは、実験室内で良好な結果が得られたからだが、実際の現場で使用されるキルスイッチはもっと複雑なものになるはずで、信頼性のある結果を得ることが難しくなるだろう。

可能性としては光を採用する手もあるようだ。
これならば、閉鎖されたタンク内のような場所ではGMOにより積極的に取り込ませることが可能になる。
いずれにせよ、安定した結果を得るには今後も研究を進めなければならない。

遺伝子組み換え生物ではないが、2014年、フランスでは極めて致死率の高いSARSコロナウィルスのサンプル試験管を紛失するという事件が発生した。
どんなに厳重に管理していても間違いは起きるものだ。

極めて危険なバクテリアなどがあっという間に拡散したら人類の危機となる。
ていうかSF映画みたいなことになっちゃう事態になるのは本当に怖いから何とかしてほしいものだ。

カラパイア 2017年11月29日
http://karapaia.com/archives/52249812.html