「スーツケースぐらつきシンドローム」仕組みと対処法 研究
2017年06月22日 14:30 発信地:パリ/フランス

【6月22日 AFP】スーツケースを引きながら駅や空港で急いでいるとき、急にキャスターが左右にぐらついてスーツケースがひっくり返りそうになる──毎日、大勢の旅行者がこの問題に悩まされているが、なぜこういうことが起きるのか、これまで誰もその仕組みについて正確な理由を説明できなかったが、「スーツケースぐらつきシンドローム」とでも言うべきこの問題の解明に挑んだ研究論文が21日、英学術専門誌「英国王立協会紀要:数理物理学(Proceedings of the Royal Society A: Mathematical and Physical Sciences)」に掲載された。
 
論文の主筆者で、フランスのパリ・ディドロ大学(Paris-Diderot University)複合材料システム研究所(Complex Materials and Systems Laboratory)の研究員、シルバン・クーレシュデュポン(Sylvain Courrech du Pont)氏は、「2輪のキャスター付きのスーツケースが左右にぐらつきやすいのは、その構造に由来する物理的な不安定さによるものだ」と説明する。
 
もっと正確に言うと、ある物に備わった不安定さは、さまざまな動きが加わることでより不安定になる。これは、模型を使ったシミュレーションや理論的な計算からも明らかだ。
 
クーレシュデュポン氏はAFPの取材に対し、問題は「相互作用」、つまり回転運動や平行移動といった動きの衝突にあると説明。ちなみに回転運動とは、車輪などが軸の周りを連続して動くこと。平行移動は、例えばスーツケース全体を任意の方向へ滑らせることなどを指す。

「矛盾するように思われるかもしれないが、(相互作用は)スーツケースが横ばいの状態で直線的に進んで行くように設計されているからこそ生じる」とクーレシュデュポン氏は語った。
 
キャスターは逸脱した動きに対する耐性が低く、速足で歩いているときに急に方向転換したり、突起物に当たって地面から離れたりしただけでスーツケースはぐらつくという。
 
こうしたぐらつきは、荷物などを運搬する2輪のカートなど、車輪が同一軸に付いている全ての2輪車でも生じる可能性がある。
 
論文には、対処法として2つの選択肢が示されている。
 
1つ目は、いったん立ち止まり、スーツケースを安定させてから再び歩き出す方法だ。
 
そして2つ目の方法だが、理論的には、キャスターの回転速度を上げればスーツケースは安定性を取り戻す。ただし空港内で走れば、それ自体リスクを伴う。
 
クーレシュデュポン氏は、こう付け加えた。「世界は、まだ解明されていないこうした単純な問題であふれているのです」(c)AFP/Marlowe HOOD

▽引用元:AFPBBNews 2017年06月22日 14:30
http://www.afpbb.com/articles/-/3132982