医療現場などから、エックス線の透過率が低い極細パイプの製造を求められている
県浜松工業技術支援センター(浜松市北区)などの研究グループは、「電鋳(でんちゅう)」
という技術を使い、外経〇・〇三九ミリという世界最小レベルの貴金属パイプを開発した。
治療技術の進歩に期待できるという。

 医療の現場では脳などの細い血管に通すカテーテル(樹脂のチューブ)の位置を把握するのに、
カテーテルの先端部分に、引き抜き加工で製造されたプラチナ−イリジウム合金のパイプをはめ、
エックス線を使ってモニター監視している。医療界では、正確な位置の把握のために、
モニターにはっきりと映るエックス線の透過率が低い素材を求めている。

 研究グループは、エックス線の透過率が低く、化学変化が少なくて人体への影響が最小限に
抑えられる純プラチナや金、ロジウムなどに着目。引き抜き加工と違い、割れや反りが生じない
電鋳という技術を用いることにした。

 電鋳は、素材にめっきを施し、素材部分を後から取り除く加工法。研究所の田光伸也(たこうしんや)
上席研究員(42)と共同研究機関の仲山貴金属鍍金(めっき)(浜松市北区、仲山昌宏社長)は、素材に
髪の毛の半分ほどの直径〇・〇二六ミリの銅やアルミ、ステンレスの棒を用い、めっき後に、
酸で素材部分を溶かすなどの手法を用いた。

 貴金属のイオンが溶けためっき液の温度や電気量(電流、電圧)といった条件をさまざまに変えて実験。
外経〇・〇三九ミリで、内径は〇・〇二六ミリのパイプを作り上げた。

 研究所によると、同程度のサイズのパイプはステンレスではありそうだが、貴金属では初めて。
電気量を制御することで、パイプの肉厚を容易に調整できるという。精度の高さなどを評価され、
国内外の医療関係の機関などから、試作品の依頼が十件ほどあるという。

 田光上席研究員は「パイプより曲がりやすい網にできないかを追究したい。
表面処理を施してほかの用途に使えないかも研究したい」としている。 (宮沢輝明)

中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20170604/CK2017060402000087.html
世界最小レベルの貴金属のパイプをつまむ田光伸也上席研究員=浜松市北区で
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