どんな時代にならうと、権力のもつとも深い実質は若者の筋肉だ。


人間、正道を歩むのは却つて不安なものだ。


男が金をほしがるのはつまり女が金をほしがるからだといふのは真理だな。


自殺しようとする人間は往々死を不真面目に考へてゐるやうにみられる。
否、彼は死を自分の理解しうる幅で割切つてしまふことに熟練するのだ。
かかる浅墓さは不真面目とは紙一重の差であらう。
しかし紙一重であれ、混同してはならない差別だ。


嫉妬こそ生きる力だ。


ユーモアと冷静さと、男性的勇気とは、
いつも車の両輪のやうに相伴ふもので、
ユーモアとは理知のもつともなごやかな形式なのであります。


裏切りは、かならずしも悪人と善人のあひだでおこるとはかぎらない。


男性は本質を愛し、女性は習慣を愛する。


どんなに平和な装ひをしてゐても「世界政策」といふことばには、
ヤクザの隠語のやうな、独特の血なまぐささがある。


「強み」とは何か。知恵に流されぬことである。分別に溺れないことである。

三島由紀夫