【プロメテウス女王の日録2】

・天環暦七五六年四相十五刻(惑星プロメテウス暦)
今日は、地球側の身体の記憶を少しだけ覗いてみた。地球側の私は、私がプロメテウスの女王であることを全く知らない。
・天環暦七五六年四相二十一刻(惑星プロメテウス暦)
今日は、G.O.Wたちが私を連れて秘密の部屋に案内してくれた。そこには、見たこともないような機械がたくさんあって、私はその一つに繋がれた。
そして、私は全てを思い出した。私がプロメテウスの女王であり、地球の小料理屋の女将でもあることを。
二つの身体、二つの記憶、そして、二つの世界を繋ぐ、EPR通信。
私は、どうすればいいのだろう。
この仕組みの秘密については先王の遺言で、『ある時期までは私には伝えてはならない』らしい。時期がくれば明かすと説明される。
・天環暦七五六年四相二十五刻(惑星プロメテウス暦)
今日、私は秘密の部屋で自身の記憶領域へアクセスした。地球側の私とプロメテウス側の私。二つの記憶は、巨大な機械装置に組み込まれた補助脳とEPR通信によって、完全に同期されている。私たち2人の身体に脳はないらしい。脳髄は機械装置の中に組み込まれ2人の意識を切り替えながら処理しているらしかった。
・天環暦七五六年四相二十八刻(惑星プロメテウス暦)
私は、決めた。私は二つの世界を守る。プロメテウスの女王として、地球の女将として。私は、私にできることをする。それが私の使命だから。これからも、私は、二つの世界で、私らしく生きていくことにした。
・天環暦七五六年五相十刻(惑星プロメテウス暦)
今日は、重要な会議があった。地球からの報告によると、彼らの文明は、まだ発展途上であり、我々の技術力には遠く及ばない。しかし、その潜在能力は計り知れない。
彼らの星系で、不安定なエネルギー反応が観測された。放置すれば、彼ら自身だけでなく、周辺の星系にも悪影響を及ぼす可能性がある。
距離は三千二百一光年。容易な距離ではない。しかし、プロメテウスの女王として、私は決断しなければならない。
G.O.W兵団を派遣する。
トランセンド・アクセラレーターという動力装置を使って高次元空間へのポータルを一時的に生成し、亜光速宇宙船を「跳躍」させることで、空間の制約を無視した超光速移動を可能にする。
その亜高速宇宙船にワープ技術を使えばプロメテウス側の時間で5年で到着は可能だと言う話だった。
そして彼らの安全を確保し、不安定なエネルギー反応を抑制する。それが、我々の使命だ。
兵団の派遣には、多くの資源と時間がかかる。しかし、未来への投資と思えば、惜しむべきではない。
私は、彼らの未来を信じている。彼らが、我々と共に、星海を平和に導く存在になることを。


作画:Microsoft Bing Image Creator

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