「あっ、目が覚めた?もう大丈夫!全部治ったよ」
「よかった~!一時はどうなることかと思ったけど。帰ったら何しようか?」
「テレビだろ。コイツ、最近俺からチャンネル奪い取るんだよ」
「じゃあ、家に帰ろう」

これは、カオリの最期の瞬間のメモリー。
カオリを治すことはできなかった。
青年にできたのは、カオリの最期の瞬間のメモリーを書き換えるだけ。

「ひどいよ、まだあんなに小さな子供なのに…」

泣きながら訴える女学生に、青年は言う。

「カオリは人間じゃないよ」
「まだそんなこと言うの!?」
「カオリは人間じゃない。人間だから大事にしなきゃいけないんじゃない。俺に優しくしてくれたのは、人間のナリをしているだけの機械のカオリだ。それの、何がいけないっていうんだ…!」

SWEET SCRAP(侵蝕プラトニック収録) 作:きづきあきら