・国連移民協定 中・東欧、離脱の動き ドイツにも議論飛び火

【ベルリン】移民への対処や国際協力の在り方に関する枠組みを定めた国連の移民協定が来月、正式に採択されるのを控え、中・東欧諸国を中心に協定離脱の動きが広がっている。協定を巡る議論は移民大国ドイツにも飛び火し、メルケル政権を揺さぶっている。

 「移民協定は、世界規模の問題を国際レベルで共に解決しようとする正しい試みだ。私たちの国益にかなう」。メルケル首相は二十一日、連邦議会(下院)で協定参加の意義を訴えた。これに対し、難民・移民への強硬姿勢で物議を醸す野党第一党の右派「ドイツのための選択肢」(AfD)は、治安の悪化などを理由に協定を批判した。

 国連の移民協定「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」は今年七月、交渉途中で離脱した米国を除く百九十二の国連加盟国が合意した。法的拘束力はないが、移民の人権や各国の主権尊重などを規定。国内での対処や国際協力について二十三の目的を掲げ、具体的な取り組みを提示した。

 欧州では先月末、連立政権に極右政党が参加するオーストリアが、一度は合意した協定からの離脱を発表。DPA通信によると、ポーランドも今月二十日、国の主権が十分に保障されていないとして離脱を表明した。これまでにハンガリー、チェコ、ブルガリアなどが参加を拒否。欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は相次ぐ離脱に「EUとして利益を守れなくなる」と懸念を示していた。

 ドイツでの議論は、メルケル氏が党首退任を表明した与党、キリスト教民主同盟(CDU)にも及んでいる。メルケル氏の後継を選ぶ党大会を来月七日に控え、党首選に名乗りを上げた反メルケルのシュパーン保健相が党大会で協定について議論するよう要求。南ドイツ新聞は、党大会で協定の賛否を問うことになれば、メルケル首相の信任投票になり得るとの見方を伝えた。

 移民協定は来月十、十一日にモロッコで開かれる国連会合で正式に採択される予定だが、不参加国がさらに増えれば実効性が揺らぎかねない。

・Merkel warnt vor «Nationalismus in reinster Form»
http://www.badische-zeitung.de/merkel-verteidigt-umstrittenen-un-migrationspakt
http://ais.badische-zeitung.de/piece/09/8d/74/12/160265234-h-720.jpg


2018年11月23日 朝刊 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201811/CK2018112302000136.html