■中国とドイツの親密度

7月7日、ドイツの大手一流紙「フランクフルター・アルゲマイネ」に、中国の李克強首相が寄稿した。

文章の中身は、「中国は国際貿易において、自由と公平を重視し、多国間協力体制の強化を支持していること」、「EUの繁栄を望んでいること」。だから、「ドイツ企業は不安を持たず、ドイツやヨーロッパに進出する中国企業に対して、公正でオープンな環境、および、安定した制度上の枠組みを整備して欲しいこと」。中国は「WTO(世界貿易機関)の原則をいつもちゃんと守ってきた」のである。

実は、中国のこういう望みに、ドイツはこれまでも十分に答えてきた。独中関係は、小さな例外はあっても、すでにここ100年以上、概ね良好だ。

先日、中国に行った人から聞いたが、北京の国際空港のパスポート審査のところには、「中国人」「外国人」というどの空港にでもある区別以外に、「Air China Easy Way Beijing-Frankfurt」という窓口があるそうだ。そればかりか、北京〜フランクフルト間を移動する人専用のチェックインカウンター、荷物のターンテーブルなども整備されているという。中国とドイツの親密度を考えると、さもありなんとも思える。

李克強首相の寄稿文が掲載された2日後の9日、本人がベルリンにやってきた。中国とドイツは定期的に政府間協議を行っているが、李克強首相は今回で5度目。カウンターパートはいつもメルケル首相だ。

2016年、中国はドイツにとって最大の貿易相手国となった。以来、メルケル首相は公式の場で、「中国はドイツにとって一番大切な国」とはっきりと言う。

去年の交易額は、中→独が1000億ユーロ、独→中が860億ユーロ。ドイツのGDPの半分は輸出によるものだから、中国の存在は大きい。ドイツ車も、3台に1台は中国市場向けだ。ドイツ経済は、中国がくしゃみをしたら、風邪どころか肺炎になる。

だから、現在の米中貿易戦争も他人事ではなく、ドイツ人にとっては我が身に降りかかった災難に等しい。しかも彼らは元々トランプ大統領が大嫌いなので、あの大統領のおかげで中国の景気が冷え込むかもしれないと想像しただけで、頭に血がのぼる。

このトランプ憎しが後押しになったのか、今回の政府間協議はまさに独中スクラムの大展開となった。22の経済協力協定も調印された。


■ドイツが自給できない意外なモノ

一番インパクトの大きかったのは、電気自動車用のバッテリー工場だ。旧東独のチューリンゲン州の州都であるエアフルトに、中国最大のバッテリーメーカーCATLが進出することになった。工場の敷地は80ヘクタール。サッカー場にすれば、112面。初期投資額が2億4000万ユーロという。

実はヨーロッパには、電気自動車のバッテリーを作れる会社がないそうだ。だから、これまでも主に中国から輸入していたが、バッテリーは危険物なので飛行機では運べない。だから輸送に時間と手間がかかった。

ところが、新工場の建設予定地はアウトーバーンのインターチェンジに近く、どの自動車メーカーにも数時間で運べるとか。BMW社は早くもこの日、2021年の分として、ここで作られたバッテリー15億ユーロ分の発注を出した。

それにしても、電気自動車をこれから爆発的に伸ばそうと言っているドイツが、バッテリーを自給できないというのは意外だ。しかも、EU中を探しても、バッテリーに関しては、目下のところ中国のライバルはいないという。

この調子ではますます中国依存が進みそうだが、これがドイツ人の考えるウィン・ウィンの関係なのだろうか?

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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56531