比人の日本への難民申請で、借金などの「私的トラブル」が約6割

 昨年、日本への難民申請者が国籍別で最多となったフィリピン人の申請内容は、難民条約の難民要件にはない借金をめぐる債権者による脅迫など「私的トラブル」が約6割に上っていることが日本法務省入国管理局への取材で20日までに分かった。

 国民の約1割が海外出稼ぎ者という海外就労大国の比から人手不足の日本への出稼ぎを望んでも、現在の日本の制度では外国人が正式に就労できる滞在資格は限定的。同局は、審査中に特定活動として就労が可能な難民申請が、当初から就労目的に利用されているケースが相当数に上るとみている。

 入国管理局によると、2017年の難民認定申請者(速報値)は1万9628人でうち比国籍が最多の4895人だった。難民認定された人は全体で19人にとどまり、比国籍で認定された人はいなかった。16年の比申請者は国籍別で3位の1412人だった。

 比人申請者の申し立て内容は「私的トラブル」が約6割で、具体的には(1)犯罪行為を目撃し当局に通報したところ、犯罪者から脅迫を受けた(2)元交際相手に復縁を求められ拒絶したところ,脅迫された(3)借金の返済が滞って債権者から脅迫を受けた──などだった。

 一方で「地域の治安悪化に対する不安等」も比人の申請理由の約2割あった。ドゥテルテ政権下の麻薬撲滅運動、比共産党軍事部門の新人民軍(NPA)やイスラム過激派のアブサヤフの暴力行為に巻き込まれる恐れなどだった。

 残り約2割は、抗争当事者としてNPAやアブサヤフに「狙われている」などとの申し立てだったという。

 入国管理局総務課難民認定室は「地域で暴力に巻き込まれる恐れがあるだけでは認定の対象にならない。狙われているとの理由の場合、比政府が放置して保護ができない場合かどうかが問題となるが、比政府が取り締まりを行っていると評価している」と語った。

 1951年の難民条約は、難民を「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由」で迫害を受ける恐れがある人々と定義。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々を指す」としている。(米元文秋)

まにら新聞
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