米ニューヨーク市で路上生活者(ホームレス)が増え続け、その対策をめぐり議論が起きている。
ホームレスの支援に力を入れるデブラシオ市長は5年間で計90のシェルター(保護施設)を増やすことなどを発表。
こうした中、マンハッタンの最高級高層マンションの裏側にもシェルターができることになり、
住民の困惑は広がっている。

 マンハッタンのセントラルパークからも近い58丁目にある「パークサボイホテル」。
デブラシオ氏は16日、このホテルを、
来月にもホームレスの単身男性用のシェルターとして新たに利用すると発表した。

 マンハッタン中心部での計画には、衝撃が広がった。
同ホテルの裏側には、75階建ての高層ビル「ワン57」がそびえ立つためだ。
高級ホテル「パークハイアット」が入るほか、居住フロアがあり、
最上階のペントハウスは建設当時には1億ドル(約120億円)以上で売買されたとされ、
「世界で最も高価なマンション」とうたわれた。

地元住民らは「ホームレスの支援には賛成だが、まさか近所に来るとは…」と困惑顔。
数軒先の高級アパートに住む60代の女性は「まったくばかげている。
この辺りは『億万長者通り』といわれているのに、なぜここを選んだのか。
市長は富裕層が嫌いなのだろう」と怒りをあらわにした。

 他にも、シェルターの計画が発表されたブルックリンの地域では、反対運動が活発化している。

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、市のホームレス人口は昨年2月の調査で、
シェルターでの生活者を含めて約7万7000人。
デブラシオ市長が着任した2014年1月時点は約6万8000人で、3年間で1万人近く増えた計算になる。

 増加の背景には、不動産賃料の高騰と家計収入の低迷があり、働いても家賃を払えない人が増えていることも原因だ。
市によると、シェルターの入居者の約7割が家族世帯といい、子供のホームレスが多いことも問題視されている。

住居の確保は喫緊の課題で、市はシェルター代わりに民間ホテルの部屋を借り上げているが、
昨年の調査では、約7500人のホームレスが利用するホテル代の総額が1日で約57万5000ドル(約6400万円)に上ることが判明。
負担額の大きさに住民からの反発が強まった。

 また昨年、ホームレスが宿泊する57のホテルのうち、
34のホテルで売春や違法薬物の取引などの犯罪行為が発生。
治安の悪化も指摘されており、デブラシオ氏は2023年までに民間ホテルの利用をやめることも打ち出している。

関連ソース画像
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産経ニュース
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