大学を卒業して就職してから、ずっと実家暮らしをしていた。
家にお金を入れるのは当たり前のことだと思い、毎月決まった額を母に渡していた。

数年後、転勤で実家を出ることになったとき、母が封筒を差し出した。
中には証券会社の書類と、小さな金のインゴットとビットコインが入っていた。

「あなたが毎月入れてくれたお金ね、生活費なんていらなかったから、全部これに変えておいたのよ。株と債券と、ちょっとだけゴールド」

驚いて言葉を失った。
ただの“家に入れていたお金”が、いつの間にか将来のための財産になって戻ってきたのだ。

「あなたが一人暮らしを始めるなら、これが役に立つでしょ」
母のその言葉に、胸が熱くなった。

生活費のつもりが、未来への投資になっていた。
何よりも親の想いが詰まった財産が、自分にとっては一番の“資産”だった。