620 名無しさん@お腹いっぱい。 2025/06/11(水) 11:14:42.62 ID:3P2siCMDH
再び訪れた、Discordでの通話の時間。
画面に映る彼女の姿は、前回と何も変わっていなかった。気の抜けた部屋着、無造作な髪。背景には、やはり生活感が生々しく散らかっている。
「あ、健太さん。また入ってくれたんだ。ありがとう」
彼女は、僕が一度退会していたことにも気づいていた。その事実に、胸がチクリと痛む。
「……お久しぶりです」
「うん。なんかさ、最近めっちゃゲームしてるんだけど、新しいモニター欲しくなっちゃって。だから、ほんと助かる」
開口一番、金の話だった。もう、驚きもしなかった。
「そうですか」
「そう。だからさ、マジ感謝」
僕は、意を決して口を開いた。ずっと胸の奥に仕舞い込み、蓋をしていた言葉を。
「あの……一つだけ、聞いてもいいですか」
「ん? なに?」
「僕が、白星あわわを好きだった二年間は、無駄だったんでしょうか」
言ってしまった。ルール違反だとは分かっていた。だが、もうどうでもよかった。
彼女は一瞬、きょとんとした顔をした。そして、次の瞬間、心底面倒くさそうに、深いため息をついた。
「はぁ……。何、その話。今さら?」
その声には、軽蔑の色が滲んでいた。
「別に、無駄とかじゃないんじゃない? 知らないけど。だって、楽しかったんでしょ? それでいいじゃん」
違う。
僕が求めていたのは、そんな答えじゃない。
僕らが過ごした時間は、確かに楽しかった。だがそれは、彼女も同じ気持ちでいてくれると信じていたからだ。画面の向こうとこちら側で、同じ熱量を共有できていると、信じていたからだ。
彼女にとって、それはただの「過去の仕事」であり、ファンが「勝手に楽しんでいた」だけの出来事でしかなかった。

😭