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最近、何だか急に日本のアニメや漫画の実写化が日米共に増えた気がしないだろうか。それは決して気のせいではない。2000年以降、ハリウッドが深刻なまでのネタ切れ状態となっていたことが原因に通じているのだ。
ハリウッドはとにかくオリジナル作品が不調であったことから、冒険的な作品に製作費をかけるよりは、もともと知名度のある作品のリメイク、続編、そしてコミックの映画化といったものが安定した収益を得られるということで、頻繁に企画に上がったのだ。現在のアメコミ映画ブームもその流れが導いたものでもあるだろう。
2000年代前半、大手映画会社がリメイクや映画化権を取得するだけしておいて、とりあえず保持するという動きが活発となった。結局実現できなかった企画は山ほどあるが、Netflix映画『Death Note/デスノート』(2017年)や『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)のように、権利が切れそうなギリギリのところで映画化されることもあったりする。
作品や契約形態によって権利の有効期間は全く異なるし、関係者しか知りえない情報ということもあって、確信をもって言うことはできない。だが、長期間保留されてきた企画が突然で動く場合は、おそらくそういうことなのだろう。
また『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)などの制作会社ウェタが手がける予定でコンセプトアートも存在していた『新世紀エヴァンゲリオン』の実写化企画や、『フルメタル・パニック!』や『童夢』、『ルパン三世』など10年以上動いていない企画もある。
『鉄腕アトム』を原作とした映画『ATOM』(2009年)を製作した香港のアニメ会社IMAGIが『鉄人28号』や『科学忍者隊ガッチャマン』も映画化しようと企画していたが、こちらも挫折してしまった。
『NARUTO -ナルト-』も当初は『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシーが監督を務める予定であったが、現在のところは監督が決まっていない状況だ。
現在撮影中のNetflixシリーズ『ONE PIECE』は、もともとは映画化企画として浮上したものだし、2021年に配信されたNetflix『カウボーイビバップ』も本来は映画化企画だった。
ハリウッドが日本の漫画やアニメを映画化する場合、余裕を持っているというより、スケジュールが差し迫っている場合が多い。結局、力業になってしまう大きな原因はまさにそこにあるのだ。
日本の場合はどうだろうか。2000年以降のネタ切れ問題は日本も同様であり、漫画自体が絵コンテとしてそのまま使用できることからも、漫画の映画化が相次いだ。
しかし日本の問題点は、ハリウッドに比べて圧倒的に予算が少ないことだ。そのため制作費も抑えられて、日常の延長線上を描くだけでいい少女漫画や青春漫画ばかりが映画化される。
海外の場合は、漫画は現実とはかけ離れているべきだという意識が強いのか、あまり日常を切り取った漫画自体が流行らない。そのため、赤塚不二夫作品や藤子・F・不二雄、藤子不二雄A作品というのはそれほど輸出されていなかったりもする。日常の延長線上の物語が多いのは、日本漫画の特徴ともいえる。
日常の延長線上的な作品に慣れてしまっているから、大きなスケールや世界観を構築すること自体が上手くいかないのだ。
そんな中でも、製作費が日本映画最大規模といわれた『キングダム』(2019年)の成功によって、資金さえあれば日本も世界市場で戦えると思わせたことは大きな一歩である。そこに拍車をかけるには、Netflixのような資金力のあるスポンサーが後押ししてくれる環境を活かすほかないだろう。
ただ裏を返せば、失敗したのは資金不足のせいだと言い訳が効かなくなってしまった。世界のユーザーの心に響かなければ、せっかく開いた市場が閉ざされてしまうため、近々でいうとNetflixシリーズ『幽☆遊☆白書』スタッフのプレッシャーは計り知れないだろう。
そんな中、ハリウッド版『僕のヒーローアカデミア』の監督を『キングダム』の佐藤信介が務めることが報じられた。これは中田秀夫が『ザ・リング2』(2005年)の監督を務めたり、清水崇が『THE JUON/呪怨』(2004年)を監督したように、一時期ホラー作品で行われていたことだ。これは漫画の映像化においても新しい形でありながら、実は理想形であるかもしれない。
漫画の実写化では、資金不足で漫画原作の世界観を描き切れないことにストレスを感じるファンが多い。だが、監督やスタッフを日本人で固めて、映画化自体はハリウッドの技術を使うという中間的スタイルにしていけば、この問題は解決されていくのではないだろうか。
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