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豊穣の女神
イシュタルを示す楔形文字が豊穣を示すアシの束であったことから、元来は豊穣の女神であったと推察されている。
古代メソポタミアでは豊穣を願う儀式として、国王がイシュタルの夫役を演じて行う結婚式「聖婚儀礼」が行われた。

愛の女神
豊穣神であるイシュタルは、多産を司る性愛の女神としても知られ、夫を持ちながら120人を越える恋人を抱えていたという。
加えて、イシュタルは彼らと休まず性交を行ってもまるで疲れを知ることはなかったとも伝えられている。
そのためイシュタルは娼婦の守護者でもあり、イシュタルの神殿には神聖娼婦が勤めを果たしていたほか、「アシンヌ」と呼ばれる女装の青年が仕えていたとする説も存在する。
また、性愛を司るイシュタルが不調(もしくは不在)になると、多くの生命が繁殖活動をやめ地上に不毛をもたらすことが後述の『イシュタルの冥界下り』で描かれている。

戦の女神
愛の女神としての傍ら戦の女神でもあるイシュタルは、王権の守護女神として「勝敗の予兆」を司る巫女と呼ばれた。
「戦闘と戦役の女君」という添名を持ち、武器を持った姿で図像化されることも多い。
後述の『イナンナ女神とエビフ山』ではイシュタルの闘争的な面がよく表されており、語り手はイシュタルを「獅子の如く吠え、野牛の如く敵国に勝利宣言をする」と表現している。
戦争に際しては、別の戦神ニヌルタと共に勝利が祈願され、勝利した暁にはイシュタルのために盛大な祭儀が執り行われた。
その戦いぶりは凄まじく、イシュタルに勝る戦士はいなかったと伝える歌まで存在する。
ニヌルタやエンリル、マルドゥクのような実力者からも、イシュタルの並びない武勇が認められていた。

美しくも残忍な野心家
イシュタルは全てを手に入れなければ気が済まない野心家だが、愛情が冷めてしまえばその後の扱いは酷いものだった。
例えば、マダラ模様のある羊飼鳥は打ち叩いてその羽をむしり取り、戦で活躍した馬を鞭打ちにしてから長距離を走らせた揚句に泥水を飲ませるなど、動物に対して非常に残忍な仕打ちをしている。
人間に対しても同様で、泣かせたり動物に変えたりという汚行を繰り返してきた。とある牧人には子どもを供物として殺させ、最後には牧人自身を狼に変えたという逸話もある。
また、自身の誘惑を撥ね退けた者に対する残酷さは群を抜いていた。
一方、信者に対しては非常に慈悲深く、愛を持って接する女神でもある。
二律背反な性格を持つイシュタルだが、その容姿は魅力的な肢体を持つ美しい女神であったとされ、太陽のように輝く光を発していたという。
各神話では、華美な宝飾品や衣装で身を包んだ様が描かれている。

うーん、凛そっくり。