小学校のとき、先生に知能に障害がある子のうちに遊びに行かされた。
彼は脇目もふらずにドラクエ3をやっていて、正直、「こいつでもドラクエとかわかるんだなあ」と思った。

三十分ほど彼のプレイを見ていて、とても悲しい事に気が付いた。
彼がそのゲームでやっているのは、アリアハンの周りでスライムとカラスを倒す、ただそれだけだった。
パーティにただ一人の勇者のLvは50を越えていた。彼は永遠、素手でスライムを殺し続けた。

とても楽しそうだった。

先に進めてやろうと思い1コンに手を伸ばしたら凄い剣幕で怒鳴られた。
なんて怒鳴られたか聞き取れなかったけれど、とにかく怒鳴られた。
それを見て彼の母親が「ごめんなさいね、○○ちゃんはファミコン大好きのよ」と僕に謝った。
彼はドラクエ以外のソフトは持っていなかった。僕はそれ以来、ゲームをやらなくなった

時々、彼と、永遠に世界を救えなかったであろう彼の勇者の事を思い出すと、とても悲しくなる。