令丈ヒロ子さんの人気児童文学が原作の劇場版アニメ「若おかみは小学生!」(高坂希太郎監督)がジワジワと支持を集めている。メインターゲットのファミリー層だけでなく、アニメファンや映画ファンまで取り込んだ幅広い層の心をつかんだ裏には、誰もが愛するあのアニメスタジオの陰が……。週に100本以上(再放送含む)のアニメを見ている“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点で分析する。

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 9月に公開された劇場版アニメ「若おかみは小学生!」が、一度上映が打ち切られた映画館で相次いで再上映されるほど話題になっています。

 「若おかみ」はタイトルの通り、小学生の主人公・関織子(おっこ)が、事故で両親を亡くしたことをきっかけに春の屋旅館を営む祖母に引き取られ、そこで若おかみをすることになるお話です。劇場版はおっこが、若おかみになる原因となったウリ坊をはじめとする幽霊たちや個性的な客人たちとの出会いと別れの中で両親の死と向き合い、成長してゆく物語になっています。

 老若男女を問わず受け入れられるストーリーではあるものの、原作が児童文学の「青い鳥文庫」(講談社)ということもあって、公開するまでは完全に子供やファミリー向けの作品と考えられていました。ところが、いざふたを開けてみると、20代以上の大人たち、それも会社員やカップルといった意外な層の間でも徐々に話題となり、観客の熱い要望を受け、いったん上映を打ち切った映画館でも再上映するといった現象が次々と起きたのです。

 本作が、公開前からは予想できなかった形でこのようにヒットしたのはいったいなぜなのでしょうか。

 私は、人気の火付け役となったのは「意外な層からの高評価」だと思っています。この作品で気になったのが、映画の公開後しばらくすると、普段アニメを見ないような人や、冒頭に挙げたような「あなたが『若おかみ』を見るの?」というような意外な層からの高評価をちらほら目や耳にするようになったことでした。そうした「意外な人」による高評価は、作品内容への興味以前に「タイトルのイメージと全然結びつかないこの人がここまで絶賛するってどんな作品なんだろう」という、純粋な好奇心を人々に抱かせます。本作がじわじわと後から広がる形のヒットになったのも、そうした意外な層からの口コミやSNSへの投稿が起爆剤となり、気になった人々が次々と劇場に足を運び始めるようになったからだと思うのです。

 ではそうした意外な層の人たちが最初に「若おかみ」に興味を持ったのはなぜかというと、それは、新海誠監督や「NON STYLE」の井上裕介さんといった著名人からの絶賛が原因であるとよく言われています。しかし、それ以上に大きかったのは、そうした著名人の絶賛をきっかけに、実際に劇場へ足を運んだ人たちが、軒並み大絶賛の感想を発信し続けたことではないでしょうか。何よりそうした絶賛の感想を見ることで、本作を子供やファミリー向けの作品であると思っていた人たちが、「『若おかみ』って自分たち向けの作品でもあるんだ」ということに気づくことができ、幅広い年齢層に支持されて今のヒットにつながったと思うからです。

 こうした「若おかみ」の盛り上がり方は、同じく公開後に徐々に話題となっていった「この世界の片隅に」と似ているともよく言われているようですが、私は全くの別物だと考えています。

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