ブロッキング法制化の是非を巡って対立を深めていた知的財産戦略本部の海賊版サイト対策検討会は10月15日、検討会としての「とりまとめ」はおろか、審議状況の報告さえ出せないまま会議を無期延期とした。前代未聞の幕引きとはいえ、ある意味、予想できたことだ。最初に「ブロッキング法制化」というゴールを設定した事務局が、強引に議事を進めてきた帰結ともいえないか。
半数がブロッキングに反対
 この日、激論は3時間半にわたって続いた。前半戦のクライマックスは、全委員の半分を占める9人が提出した意見書の扱いだった。

 9委員は意見書で、とりまとめの結論部分を以下のように修正することを求めていた。

 「ブロッキングの法制化は現状では違憲の疑いがある」「ブロッキングの法制化については一旦見送った上で、民間の協力においてブロッキングを除く対策を総合的に推進するべきであると考える」

 共同で意見書を提出したのは、宍戸常寿・東大教授や丸橋透・明大教授、森亮二弁護士のほか、電気通信事業者やインターネット関係の団体代表や消費者団体代表などだ。中には、水面下で出版社と通信事業者の協力の枠組みづくりを進めていた委員もいる。ブロッキング法制化を棚上げにしても、それ以外の協力によって海賊版サイト被害を収束させるという強い意思を示すためだ。

■ほかに有効策はない?

実は、この直前には、ブロッキング反対派を後押しするような新事実も相次いで判明していた。一つが、米国の司法制度を活用することで、米国のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者、クラウドフレア社から、同社のサービスを使っていた「漫画村」運営者の情報を開示させた事例。もう一つは、日本の裁判所が、クラウドフレア社のサービスを使うサイトについて肖像権などの人格権侵害を認め、差し止めと発信者情報開示の仮処分命令を決定したことだ。

 いずれの手法も海賊版サイト被害を止めるための突破口となる可能性があり、「ブロッキング以外に有効な対策がない」としてきた推進派の主張に大きな疑問を投げかけるものだった。

■「漫画村」運営者、特定に成功

米国の司法制度を活用し、漫画村運営者の特定に成功した山口貴士弁護士によれば、その手法は簡便でスピーディー、しかも、これまで想像されていたよりはるかに低コストで済むという。

 まず、「漫画村」に作品を勝手に掲載されていた漫画家を原告として、米国の連邦地方裁判所で、漫画村運営者を氏名不詳のまま被告とし、著作権侵害による損害賠償請求訴訟を提起。そして、裁判所から被告を特定するためのディスカバリー(証拠開示手続き)を行う許可を求め、漫画村にサービスを提供していたクラウドフレア社に対し、漫画村に対する課金関係の資料を提出させたのである。

 「6月12日に提訴し、クラウドフレア社から運営者の情報が届くまで17日間しかかからなかった。費用も、「億」より0が二つほど少ない金額」。入手した情報をもとに国内で運営者の居場所を調査して突き止め、現在、刑事告訴や損害賠償請求の準備を進めているという。

 こうした法的な措置が成功したという事実は、ブロッキング立法が違憲となる疑いをより深めることにつながる。ブロッキングは憲法の保障する通信の秘密を侵すため、それを可能とする法律は、表のような違憲審査基準をクリアしなければ違憲となる疑いがある。

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読売新聞
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