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■モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)の声明

<ブロッキング要請に対する意見書>

インターネット上の漫画海賊版サイトの問題について、
政府がインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)に対して
「サイトブロッキング」によるアクセス遮断措置を要請する検討をしていることが報じられています。

漫画をはじめとした我が国の優良なコンテンツ文化を保護育成して行く上では、
違法海賊版サイトの対策は重要であるということは理解します。

しかしながら、サイトブロッキングは、権利侵害行為と一切関わりのない人を含めて、すべての利用者の通信の宛先を監視し、
アクセスを遮断するもので、憲法上の権利でもある通信の秘密及び国民の表現の自由、知る権利を侵害する可能性があります。

政府は海賊版サイトのブロッキングを刑法上の「緊急避難」と位置づけて実施を要請するとされていますが、
法的に緊急避難の要件を満たすとも考えられず、通信の秘密の例外にできる正当な理由はありません。

我が国における唯一のブロッキング実施例である児童ポルノのブロッキングは、児童の権利と国民の通信の秘密の関係、
他に取りうる手段の有無などについて慎重に検討したうえ、児童の人格権侵害の重大性など、
児童ポルノ特有の事情を根拠に緊急避難が成立しうるとの整理により実施されたものですが、かかる整理は、
著作権のような財産的損害にまで適用されるものではありません。

違法な情報流通に対しては、削除や発信者の検挙など、違法行為を行う者への対応を行うべきで、
受信者側の通信の秘密を害する方法は簡単に考えるべきではありません。

また報道では、いくつかのサイトを政府が指定してサイトブロッキングを要請するとされていますが、
政府(行政権)がサイトの違法性を認定してサイトブロッキングを要請する行為は、事実上の検閲を要請するものであり、
諸外国にも例がありません。

先行実施国におけるサイトブロッキングは、いずれも法律または裁判所の命令に基づき行われています。

国民に広く影響を与えるサイトブロッキングのような行為を行政権がきちんと広く議論を行うことなく、
実施を要請するようなことは法の支配の観点から見てもとても容認できないものと考えます。

EMAとしては、従来、ネット上の表現の自由・知る権利を確保しつつ、ネット上での青少年の保護に取り組んできました。

今回の要請で想定されているDNSブロッキングの手法によれば、小中学生などが不用意な回避行動をした結果、
偽DNSに接続するなど、セキュリティ上の危険が生じることがある可能性も懸念されており、
上記のような不適切な方法によって実施されたサイトブロッキングにより、
青少年が被害に合うようなことは避けるべきことです。

無許諾の著作物を無料で閲覧可能にするようなサイトはセキュリティ上も問題であるため、
今回問題とされているサイトは、既にフィルタリングの対象とされています。

とすれば、フィルタリングを広く普及させることが、ネット上の青少年の安全の確保に資すると共に、
著作権者の利益を守ることに資するとEMAとしては考えています。

ハフポスト日本版
https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/11/internet-censored_a_23408329/