ドラマや映画では、漫画や小説を原作とした作品も多い。人気漫画などの映像化には批判の声も多いが、この風潮は今後もしばらくの間は変わりそうにない。

 だからこそ、放送局同士による映像化権の争奪戦は激しいものになっているそうだ。中には他社より一歩先んじるために“ひどいやり口”も横行していると聞いた。果たして現場で何が起こっているのか。

「基本的なことから言えば漫画にしても小説にしても、それを映像化するためには出版社の編集部と著作者の承諾が必要です。窓口は出版社になりますが、現在はこの交渉をスタートさせるタイミングが非常に早くなっています」(テレビ局ライツ関係者)

 早くなっているとは、どういうことなのか。

「以前は漫画や小説を読んで面白いと判断し、企画書やプロットなどを練った上で出版社に交渉を持ちかけていました。しかし、今はそんなことをしていたら他社に出し抜かれるため、ひどい場合には連載開始の第1話が掲載された時点で簡単な企画書だけを作って出版社に打診するんです」(同)

 第1話の連載開始時とは驚きだが、中身を吟味している時間はあるのか。

「当然ながらありませんよ。むしろ中身を読んでさえもいません。しかし、とにかく交渉を行って仮押さえをするんです。そうすれば他社が交渉できなくなりますので、スピードを求めるあまり雑誌が出た日の朝イチに電話をかけることも多いです」(同)

 中身の吟味もせずに交渉をしたところで、面白い映画やドラマができるとは思えないのだが……。


「無論、これはあくまでも仮押さえですから、その後、しばらく様子を見て正式に映像化を検討するものと、仮押さえをやめて手放すものに分かれます。どの漫画が人気になるのかわからないので、とにかく片っ端から押さえているんですよ」(同)

つまり、とにかく作品を仮押さえして、いいとこ取りをしようという魂胆らしい。仮押さえをした場合には、その後は1年ほど優先的な交渉が行えるために、他社に権利を持っていかれることもないという。

 だが実際、出版社からはこんな声も聞かれた。

「漫画ならまだしも、小説の場合には発売してから数十分後に電話がかかってくることもあります。本文を読んでいないことは明らかですが、向こうも必死なんでしょうね。
また、ひどいケースでは製本前のゲラを手に入れて交渉してきたり、新刊の内容が未定なのに作家名を発表しただけで交渉してきたりすることもあります。
本気で映像化したいとの思いがあるならありがたいですが、『とりあえず』という気持ちで交渉されるのは、作品を作って送り出している側からすればイラ立つ時もあります」(出版社関係者)

 このように早い者勝ちともいえる仮押さえが横行しているという。一部の人気漫画家や小説家の場合には仮押さえが不可能なケースもあるようだが、業界全体でルールを整備しない限り、この状態は続いていくだろう。

 漫画や小説の映像化のすべてを否定はしないが、せめて愛情をもって取り組んでほしいものだ。
(文=吉沢ひかる)

http://tocana.jp/2017/05/post_13190_entry.html