さすが麻雀で喧伝してるだけはある。
奥の会場は雀卓がたくさん並べてあって、スペースも広かった。
すでにスタッフが色々と機材を配置してイベントに向けての準備をしている。その中でスタッフと何ごとか指示している女性と挨拶する。
「此の度は私どものために館を貸してくださって有難うございます」
俺がそういうと女性も挨拶を返してくれた。
「これはこれは遠い所からようおこしやす。うちが福姫や」
福姫さんはそう挨拶してカラカラと笑った。
うーん、なんというか様になってるな。こんな若い身で館を切り盛りしているだけあってカリスマが垣間見える。
アイドルに勧誘するのも……
そんな邪な考えが鎌首をもたげたが、横からの冷たい視線で、正気に戻った。
いかんいかん。俺の担当アイドルは円香。そう決めたはずだろ。
横で射抜くように見つめている円香に俺は顔を向けた。すると彼女が話しかけてくる。
「やっぱり男の人ってああいうのが好きなの?」
ああいうの、の視線の先には福姫さんがいる。円香は自分の衣装と彼女を見比べているようだった。
これはもしや?
「着たかったのかチャイナドレス? じゃあスタッフに言って用意させ―」
「嫌」
よし、楽しく話せたな。
イベントまでまだ時間的に余裕がある。他の3人が到着するまで、俺と円香は散策することにした。