涙の懇願
新設された20代の女性プロ限定のタイトル戦「桜蕾戦」(おうらいせん)ベスト16の試合後、
新人女性プロが大泣きしながら立会人に懇願していた。
「私はどのような処分でも受けますから岡田さんを勝ち上がりにしてください。私は今すぐクビでもいいですから」
 江戸時代なら小刀で自分の首を突き刺さんばかりの勢いであった。
 立会人の吉田直・元鳳凰位は対応に困っていた。吉田プロに懇願している新人女性プロの大槻あ
いみ選手は4位で敗退なのである。だから代わりに岡田紗佳選手を勝ち上がらせることなどできない。
 明らかに大槻さんは無茶を言っているのだが、それぐらいパニック状態に陥っていたのである。
 そしてなぜか吉田プロも泣いていた。泣きながら大槻さんをなぐさめていた。
「みんなそうやって失敗しながら強くなっていくんです。辞めるとかクビとか言わないで頑張りま
しょうよ」
 この人が泣くのはおかしいのだが、とにかく涙もろいのだ。
 まだ蕾(つぼみ)の状態の駆け出しのプロが大舞台に引きずり出されてとんでもない失態をおか
してしまった。その気持ちのいたたまれなさに共感し、思わず涙が出てしまったのだろう。
 にしても、このケースで立会人が泣くのはおかしいけど。

おまえらさすがにもう許してやれよ