2021年7月18日(日) 中日新聞 朝刊
 これは投稿ではありません。朝日新聞の「天声人語」に相当する、中日新聞の「中日春秋」の
内容でして、スレ違いだろうと思うし、上げるならもっと適切なサイトがあるかも知れませんが、
私はここしか知らないので、一応上げさせてもらいます。乞御容赦。

 担任の先生が家庭訪問にやって来る。娘からそう聞いた母親は貧しい生活の中でも
精いっぱいのおもてなしをしようとおはぎを作った
▼当日、先生は手はつけずに持ち帰ったが、その後、娘は河原の草むらにおはぎを
見つける。貧しい暮らしを見た先生がおはぎを不衛生とでも思ったか投げ捨てた。
弘兼憲史さんの漫画「課長島耕作」にこんな場面がある。読むたびに胸が痛い
▼残念ながら、こちらが用意した料理は食べていただけないらしい。東京五輪の韓国
選手団は選手村での食事を辞退し自前で給食を用意すると聞く。福島県産の食材に対し
韓国側の不安がなお消えず、これが使われる選手村での食事は遠慮するということらしい
▼福島県産食材に問題はない。おはぎを捨てられた気分にもなるが、韓国側にも事情が
ある。福島県産の食材の輸入を禁じている以上、選手団だけが、それに舌鼓を打つという
わけにもいかないのだろう
▼「母が悪いんじゃない。捨てた先生が悪いんじゃない。貧乏が悪いんだ」。漫画の娘の
せりふを思い出す。この件も悪いのは福島県の食材でも韓国選手団でもなかろう。悪い
のは日韓の相互不信であり、それを放置し、改善の糸口さえ見つけられない両政府である
▼食べてもらえぬ福島県産も、こんなおいしいものを食べられぬ韓国選手団のいずれも
犠牲者である。平和の祭典にそれがくやしい。