少数者が「正しい」とは限らないわけで。

2021年(令和3年)3月12日付大阪本社
少数者に無力感漂うこの時代に        会社員 斉藤 泰弘(千葉県 59)

 沖縄県名護市辺野古への米軍施設移設をめぐり、埋め立ての土砂の調達先に沖縄本島南部が含まれる計画
がわかりました。島南部の土には、先の戦争の無数の犠牲者の遺骨が埋もれているかもしれないのに、それ
を投入するというのです。歴史に語りつがれるであろう蛮行です。
 民が犠牲になるのは、福島も同じです。東日本大震災や、東京電力福島第一原発の事故で苦しんでいる人
たちの海に、さらに処理済み汚染水を流すことが検討されています。
 民主主義では少数者は無力です。民主主義とは「正しさ」を問うのではなく、多数決で多数者の利益のた
め物事を決める制度だからです。しかし、多数決だけで正しい選択に至れるでしょうか。今のままでは、たと
えば温暖化など環境破壊も、その防止が多数者の利益になるとわからなければ対策は進まないでしょう。
 人類は誕生以来、宗教やしきたりなど様々な流儀で物事を決めてきたと思います。今の民主主義を採用し
ているのは我々。多数決だけによらない、広い意味の「民主主義」で物事を進める知恵が薄れつつある今、
踏みとどまって問題を一つひとつ、じっくり考える以外ないでしょう。