11月6日(金)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・耕論「『女の敵は女』なのか?」より

美輪明宏さん(歌手・俳優・演出家)   封建の習い まだ続けるの

「女はいくらでもウソをつける」? まだ「女の敵は女」をやってるとは。時代遅れも
いいところですね。

「女の敵は女」というのは、封建主義の時代からの歴史の流れで、ずっと昔から
あるものです。江戸時代には大奥で女同士が戦い、明治になっても、本妻と妾、
妾同士と、女の闘争の歴史がありました。今に始まった話じゃない。

私も子どもの頃から毎日のように見てきました。うちは遊郭街の真ん中で水商売の店を
やっていましたから。男の客をめぐって女同士が戦っていました。でも、競争相手じゃ
ない私には、いつも優しくて。愛をたくさんもらいました。

店には、政治家も教育者も聖職者も、お忍びで通ってきました。昼の顔と夜の顔が、
全然違うんです。お堅い職業の人が、酒の勢いで女と痴態を繰り広げている姿を見て、
「なんだ? これは」とあきれました。それ以来、私は人を見る時に、持ち物、職業、
年齢、性別、肩書といった表面的なものは目に入れなくなったんです。その人の人柄、
考え方、魂を見るようになりました。いい教育を受けました。

女も男も、人間の中身を見れば関係ないのに、「女はウソをつける」とは。きっと
処世術の歴史なのでしょう。封建主義、軍国主義が民主主義に代わり、戦後75年も
経つというのに、まだ続けているのです。

(続く)