10月31日(土)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・多事奏論

編集委員 吉岡桂子    日中の科学力  優れた研究者 なぜ中国へ

(前略)

日本学術会議の問題に絡んで、中国が08年から始めた「千人計画」が改めて
注目されている。外国で活躍する研究者を国籍を問わず集める国家プロジェクトだ。
約10年で中国系を中心に8千人が対象となった。数千万円規模とされる研究費や
住宅の購入などを支援する。

ここで、まず言っておきたいのは、どこで誰が研究するにせよ、知的財産権や
税金などをめぐる違法行為や情報の虚偽は断じて許されない。「軍民融合」の研究が
軍拡を支える中国を念頭に、安全保障にかかわるルール作りも急ぐべきだ。

そのうえで、中国側の狙いを探ると同時に、別の角度から直視すべき問題がある。

なぜ、優れた日本人研究者が中国へ行くのか――。

(続く)