9月29日(火)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面

パブリックエディターから 新聞と読者のあいだで

山之上玲子   政権評価の声 感じ取れたか

2822日という連続在職の記録を残して、首相が交代しました。辞任の表明から
1カ月、国会のまわりでは、連日めまぐるしい動きがありました。でも、後継選びの
ニュース以上に気になることが私にはありました。

安倍政権を振り返る多くの記事を朝日新聞は載せました。「1強」といわれた時代を
読み解きつつ、経済や外交、教育、コロナ対策を検証し、残された課題を伝えました。

その報道に対する読者のみなさんの意見は大きくわかれました。

「森友・加計や公文書の改ざん問題は解決していない。首相が辞めても追及を続けて」
という報道への期待。その一方で、「政権に厳しすぎる」という声も、今回は
少なからず届きました。「おごり、緩み、国会軽視といったキーワードが並んでいる。
負の遺産をあげつらっている印象」「安定政権のよい面もあったはず」という指摘です。

新聞社には日ごろから、記事に賛同する声も反対意見も届きます。あらゆる人に好感を
もたれる記事というのは、めったにありません。とはいえ、憲政史上最長の政権が
幕をおろした節目の報道で、みなさんの受けとめ方がこれほどわかれた理由は
どこにあったのか。

パブリックエディターは、読者と新聞の橋渡し役です。心に引っかかったこの問いに
向きあわないわけにはいきません。

(続く)