2020年10月17日（土）　朝日新聞名古屋本社　声　語り継ぐ戦争
花岡鉱山の脱走者　待ち構えた　　　無職　畠山正治　（秋田県　87）

　1945（昭和20）年、国民学校6年生になった。秋田県七座（ななくら）村小繋（こつなぎ）
（現・能代市）で祖母とまだ少年だった叔父、母、4人の妹と暮らしていた。父や年長の叔父
たちは出征。空襲もなく戦争を身近に感じたことはなかったが、いずれ自分も戦争に行き、
お国のため働くのだと考えていた。

　ある日、村の駐在さんから知らせがあった。30㌔ほど離れた花岡鉱山で働く中国人たちが
監督数人を殺して脱走、村に逃げてくる可能性があるから警戒せよ。大人は鍬（くわ）や
鋤（すき）、棒を武器に待ち構え、私たち少年はいろりの灰を布袋に詰め、投げつける準備を
して、一睡もせずに夜を明かした。いよいよ戦争の嵐が村にやってくる。緊張したが、村には
現れず胸をなでおろした。

　大人になって知ったのは、花岡鉱山には中国人986人が強制連行され、寒さと飢えと過酷な
労働で死者が増えていたこと。脱走した全員が捕まり、厳しい拷問で百余人が死んだという。
その加害の側に、私も紛れもなくいたのだ。後に遺骨の発掘作業に参加。大きな穴に遺体が
積み重ねられていたと知り、その残酷さに胸が痛んだ。

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　花岡鉱山の話は有名ですが、真相究明はなぜかタブー視され、シナ人が強制連行されて虐待
されたという内容の話だけが流通しています。