5月23日(木)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・耕論「令和フィーバーなぜ」

辻田真佐憲さん(近現代史研究家)   政治利用 完璧に近い成功

安倍晋三首相が改元の主役のようにふるまい、ためらいなく政治利用した、という
印象です。内閣支持率も上がりました。次は、来日するトランプ大統領と相撲や
ゴルフを楽しむ姿をアピールし、「衆参ダブル」もささやかれる夏の国政選挙で
勝利につなげたいのでしょう。

安倍政権は2013年に当時の天皇・皇后ご夫妻を招き、サンフランシスコ講和条約の
発効にちなんだ「主権回復の日」の式典を開き、沖縄の反発を招きました。昨年は
明治維新150年の記念式典も開きましたが、盛り上がりに欠けました。これらに
比べ、改元イベントは完璧と言えるほど成功しました。

「令和」という元号は、首相が指示し、学者に追加で考案を求めたものといいます。
記者会見で首相は、出典となった万葉集について、日本最古の歌集であることを
強調しました。中国の古典ではなく国書であることにもこだわりました。保守派が
大好きな「国威発揚」にぴったりです。

万葉集には、天皇や皇族だけでなく防人や農民まで幅広い階層の歌が収められていると
されます。首相はそのことに触れ、自分に都合よく「1億総活躍社会」をアピール
しました。こんな我田引水はありません。

(続く)