>>781
(続き)

自民党は総裁としての首相日程について、「組織的に演説を妨害する方もいる」
(萩生田光一幹事長代行)との理由から一般向けには公表しなかった。ヤジを飛ばした
聴衆が警察に排除される会場もあった。

先月閉幕の通常国会でも異論は封じられた。参院選への影響に神経質になっていた
自民党が、ルールに基づく野党の委員会開催要求を拒み、論戦に機会を奪ったからに
他ならない。

1955年に誕生した自民党は「わが党は、国民政党である」と宣言。「特定の階級、
階層のみの利益を代表し、国内分裂を招く階級政党ではない」とした。野党転落の反省
から2010年につくった新綱領には「多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営
し、政府を謙虚に機能させる」とある。だが、政権復帰から6年半で目の当たりにした
のは、変質した「国民政党」の姿である。

自民党幹部の一人は今回の参院選を「経験したことのない、与党にも野党にも風が
吹かない選挙」と指摘する。過去2番目に低い投票率(48・80%)は、山積する
課題に立ち往生したまま分裂する政治への不信、あきらめの表れにうつる。

自民党内には「安倍政治の特徴は多数決がすべて。野党の納得は視野にない」との声が
ある。秋以降には、国民的合意が求められる憲法改正論議や安定的な皇位継承、
社会保障制度改革が政治日程に上る。党内議論を含めた異論の排除は、政治不信を高め、
いずれ自らに跳ね返ってくる。参院選の結果を「政治の安定が選択された」と誇る
自民党の真価が問われる。

(終り)