7月3日(水)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・多事奏論

編集委員 国分高史   解散判断の今昔  同日選騒動 失われた道義

ひと月前は強く吹いていた衆院の解散風はやみ、政界は21日の参院選一本に向けて
動き始めた。あのころは与党にも野党にも「選挙事務所を仮契約した」という衆院議員
がいて、衆参同日選に向け浮足立っていたのは間違いない。

同日選がなくなったのは、自民党の支持率が堅調で、参院選単独でもそれなりに勝てる
見通しが立ったからだ。安倍晋三首相に近い中堅議員は、3年前の参院選で自民が
1勝5敗と苦戦した東北の一人区でも戦えるめどがついたことが大きいと話す。

また、衆院解散の大義がないまま同日選に踏み切った場合、「反安倍票という寝た子を
起こし、自民、公明で衆院の3分の2を割る可能性が出てくる」(幹部)との懸念もあった。

一方、公明の斉藤鉄夫幹事長は、衆参で4種類の票を投じる複雑さによる支持者の混乱
などを理由に同日選には一貫して消極的だった。別の公明幹部は「同日選だと言われても、
5月の連休明けから支持者は参院選に集中して動き始めている。戦艦大和は急に進路を
変えられない」と話す。

要するに、同日選に打って出るかどうかは徹頭徹尾、政権首脳による与党に有利か不利かの
戦略判断であり、議員たちはただそれに従うのが当たり前となった。

(続く)