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封印のはずが

「事実上論破をさせていただいたと思っている」。今年4月4日の参院決算委員会。
厚生労働省の毎月勤労統計をめぐる野党議員との論戦で、首相は「論破」という
言葉を使った。

広辞苑に「議論して他人の説を破ること。言い負かすこと」とあるように、相手を
やりこめるニュアンスがある。国会の議事録によると、「論破」を口にした戦後の
歴代首相は安倍首相ただ1人だ。

憲法63条は国会で説明を求められた首相や閣僚に出席義務を課し、衆参両院の規則で
委員の質問権を保障している。首相や閣僚らの質問権の規定はない。野党に投じた
「民意」を受け止めるためにも、首相や閣僚が質問に答え、国民に理解を求める姿勢が
要求される。

首相自身も森友・加計学園問題で支持率が急落した17年、「謙虚、丁寧、真摯」を
挙げて、野党攻撃を封印したはずだった。ところが、同年10月の衆院選で勝利して
以降、すっかり元の姿勢に戻っている。

政府・与党の姿勢をただす役割が求められる国会で、野党でありながら、首相を批判
する勢力への攻撃を繰り返す言動も目立つ。
日本維新の会の足立康史氏は17年11月の国会で、安倍首相への批判を強めていた
石破茂元幹事長らを「犯罪者」と呼んだ。のちに謝罪・撤回したが、足立氏はこうした
他者への攻撃的言動などで6回、懲罰動議を出された。北方領土をめぐる戦争発言で
維新を除名処分になった丸山穂高氏は、今年2月、統計不正問題を追及する野党を
「トンチンカンで的外れ」と断じた。

(続く)