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(続き)

森友学園問題――国有地が森友学園に破格の安値で払い下げられた件、さらに財務省が
この払い下げに関する公文書を改ざんした件――については、官僚たちが首相の意向を
忖度して行動したという見方が有力になっている。国会で最大の争点となった首相
ないし首相夫人から財務省への支持があったかどうかは不明のままだ。

アイヒマン裁判でも、アイヒマンにヒトラーから命令があったかどうかが大きな争点と
なった。アイヒマンがヒトラーの意志を法とみなし、ときに喜々として遂行していた
ことは確かだ。しかし大量虐殺について、ヒトラーの直接または間接の命令を受けて
いたのか、それが抗えない命令だったのかなどは、どうもはっきりしない。

ナチスの高官や指揮官たちは、ニュルンベルク裁判でもそうであったが、大量虐殺に
関するヒトラーの命令の有無についてはそろって言葉を濁す。絶滅収容所での空前絶後
の蛮行も、各地に展開した殺戮舞台による虐殺も、彼らのヒトラーの意志に対する忖度
が起こしたということなのだろうか。命令ではなく忖度が残虐行為の起源だったの
だろうか。

さて、他人の考えを推察してこれを実行する「忖度」による行為は、一見、忠誠心など
を背景にした無私の行為と見える。しかしそうでないことは、ヒトラーへの絶対的忠誠
の行動に、様々な個人的な思惑や欲望を潜ませたナチスの人々の例を見ればよく
わかる。

(続く)