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人生100年 中高年に刺さる   社会学者 古市憲寿

癖がない絵で、漫画を読み慣れていない中高年もすんなり読める。人物の描き方も
今っぽい。旧制中学の生徒は丸刈りだったはずですがそうしていないし、主人公も
丸めがねの天才少年風です。

タイトルにも中高年を中心に売れ始めた理由があると思う。「人生100年時代」と
語られる今、「どう生きるか」は重要な問題です。学生時代は自分探し、会社では
企業戦士として戦い、さて定年。不安なところにこのタイトルが刺さったのではないか。
中高年の気分が若いのが今の日本です。

僕は今回、原作を初めて読みました。個人の尊重、知識や社会の進歩への信頼という
近代主義の原理がはっきり書かれ、吉野が、戦後も通じて日本をどんな社会に
したかったのかがよくわかる。

「エリート予備軍」のコペル君が叔父さんから学ぶ原作のスタイルは説教くさい感じを
受けるが、漫画はそうでもない。最近「近代主義」や「リベラル」の評判がよくない
ですが、実は中身よりも語り口の問題なのかもしれません。

  (続く)