1月15日(月)朝日新聞東京版夕刊4面・わたし第二章

森永卓郎(経済アナリスト) 「仕事は遊びだ」 @イタズラが変えた職業観

大学卒業後、最初に就職したのは日本専売公社(現JT)だった。
半年間におよぶ長野の上田工場での研修のあと、
配属されたのは本社の主計課資金係だった。
当時の専売公社の売り上げは約3兆円、それを係長以下、たった4人で仕切っていた。

資金係の主な仕事は、
専売納付金(現在のたばこ消費税)を国に納めるときに不足する資金を
郵便貯金を原資とする大蔵省資金運用部から借り、
それを毎月の売り上げで返済していくことだった。
会社には日銭で約百億円が入ってくる。
私の最初の仕事は、返済のために2千億円の小切手(国庫金振替書)を書くことだった。

その直後だったと思う。
先輩から受け取った引き継ぎ書をみると、
資金調達には二つの方法があると書いてあった。
一つは資金運用部資金で金利は7%、もう一つは、国庫余裕金で金利は0%だった。
私は、係長に聞いた。
「なぜ金利ゼロの国庫余裕金を借りないんですか」
「いま、国の財政が厳しくなっていて、余裕金なんてないんだよ」
「だったら余裕金を作ればいいじゃないですか」

  (続く)