(>>53続き)

翌日の朝刊で、同僚が首相の間違いをきちんと記事にした。民間議員については「3月以降、
10回以上掲載」。加戸氏の発言も国会翌日に見出しを立てて報じていた。

改めて首相の対応について考えてみる。まず指摘すべきは、その不誠実さだ。質問をかわす
ような新聞批判は「丁寧な説明」とは言えない。

「アリバイ作り」などと記事の分量を持ち出したのは、論理のすり替えだ。

問題は特区の選定で、首相やその周辺が支持したり、官僚が忖度したりして、行政の公正性が
ゆがめられたかどうかだ。選考の過程に関与していない加戸氏の記事が少ないのは当たり前
ではないか。

首相の言葉の端々に、加計問題を追い続けるメディアへのいら立ちがにじんでいた。きっと、
都議選で演説にヤジを飛ばしてきた人々に思わず叫んだ「こんな人たち」と同じように見て
いたのだろう。

「胸を張って」言えますかという逆質問に、そんな本音が表れていた。あのとき、問い返すべきだった。

「首相こそ、胸を張って質問に答えているのですか」と。

  (終り)