安倍晋三が経済財政運営の指針となる「骨太の方針」の原案をまとめた。
来年10月の消費税率10%の引き上げを明記したが、増税分の使途はデタラメの極みだ。
増税前の駆け込み需要の反動減を抑えるため、2019〜20年度に景気対策を実施。
具体的には、住宅や自動車購入時の減税拡大に加え、幼児教育・保育の完全無償化を来年10月に半年前倒し、
低所得世帯の国立大学の入学金免除と、完全なバラマキ策である。

これらの財源は消費増税の増収分だ。
安倍晋三は消費税率の引き上げ分を人気取りに充てる一方で、財政再建を軽んじる。
基礎的財政収支(PB)黒字化の目標時期を従来の20年度から25年度まで5年も先送りした上、
達成は現実離れした「高度成長」頼み。
内閣府の想定通り、20年代前半のGDPが、バブル期並みの「実質2%、名目3%以上」で推移しなければ実現できない。

安倍晋三が「強い経済を取り戻す」と豪語し、3本の矢を放ってから5年。
名目金利もゼロからマイナスに移行したものの、GDPは停滞し、今年1〜3月期はマイナス成長に陥った。
かような現状でバブルの再来を期待するとは、正気の沙汰ではない。
果たして消費増税の増収分をバラまけば「強い経済」を取り戻せるのか。
少子高齢化が年々進行し、この国は今や人口減社会に突入した。
22年度以降は団塊世代が75歳以上になり、医療費が急増する。
「昭和の頃の高度成長よ、もう一度」という夢想を大前提に財政再建を追い求めるのは時代錯誤の発想だ。