聖愚問答抄

又第三の礼拝雑行とは念仏の行者は
弥陀三尊より外は上に挙ぐる所の諸仏菩薩諸天善神を礼するをば
礼拝雑行と名け又之を禁ず、
然るを日本は神国として伊奘諾伊奘册の尊此の国を作り
天照大神垂迹御坐して御裳濯河の流れ久しくして今にたえず
豈此の国に生を受けて此の邪義を用ゆべきや、
又普天の下に生れて三光の恩を蒙りながら
誠に日月星宿を破する事尤も恐れ有り。


念仏者・追放せしむる宣旨・御教書・五篇に集列する勘文状

夫れ以みれば仏法流布の砌には天下静謐なり
神明仰崇の界には国土豊饒なり、
之に依つて月氏より日域に覃んで君王より人民に至るまで
此の義改むること無き職として然り。

頑愚の類は甚深の妙典を軽慢し、無智の族は神明の威徳を蔑如す。

然るに又近来先規を弁へざるの輩、仏神を崇めざるの類、再び専修の行を企て、猶邪悪を増すこと甚し。
日蓮不肖なりと雖も、且は天下の安寧を思ふが為、且は仏法の繁昌を致さんが為に
強ちに先賢の語を宣説し称名の行を停廃せんと欲す。
又愚懐の勘文を添へ、頗る邪人の慢幢を倒さんとす。