『生け贄』

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?164
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俺の親父の実家がある村の話。

父親の実家、周囲を山にぐるっと囲まれた漁村(もう合併して村ではないけど)なんだ。
元の起源は、落ち延びた平家の人間たちが隠れ住んだ場所で、それがだんだん村になっていった感じ。
まぁそんなこと、村で一番の年寄りの爺さんがガキンチョに聞かせるだけで、ほとんどの人間は意識していない。
若い子とかは、知らない子のほうが多いくらいだ。
俺の住んでいる市街(といってもすげー田舎)とそれほど距離があるってわけじゃないんだが、地形の関係で周囲と孤立している。
今でこそ道路もきちんと整備されて、簡単に行き来できるようになったけど、20年前なんかはろくに道路も整ってなくて、まさに陸の孤島って言葉が似合うそんな場所だった。

よく田舎では余所者は嫌われるって言われてるけど、全然そんなことないんだよな。
村の人たちは排他的ではないし、気のいい人たちだよ。土地柄的に陽気な人が多い。
親族内でお祝い事があったら、明らかに親戚じゃない知らないオッサンとか混じってて、それにも構わずみんなでわいわいやったりとか。
基本的に飲めや歌えやっていう感じ。
俺は半分身内みたいなもんだから、それでよくしてくれてるところもあるんだろうけどさ。

正確な場所はさすがに訊かないでくれ。俺まだその村と普通に交流してるからあんまり言いたくない。
言えるのは九州のとある地方ってことだけだ。

親父の実家自体は普通の漁師の家。
でも、家を継いだ親父の兄貴(親父は九人兄弟の真ん中)が、「年を取ってさすがに堪える」って言うんでもう漁業は止めてる。
実家は親父の兄弟姉妹とその家族が何人か一緒に住んでたり、親父の叔父叔母が同居してたりでカオスだ。
俺も親父も親戚関係は全然把握できてない。誰が尋ねてきても「多分親戚」ってくらい親戚が多いんだよ。

で、俺の家は何かあればちょこちょこ実家に遊びに行ってた。俺がガキの頃はかなり頻繁だった。
小さい頃は楽しかったけど、中学生にもなるとさすがにそういうのもうざくなってくるが。