「ソ連が講和を求める」

OKW(ドイツ国防軍最高司令部)にとって嬉しい日である。テーブルには
シャンペンとキャビアが並べられ、総統閣下が興奮気味に熱弁を振るって
いる。それもそのはず、快進撃を続けるドイツ軍がレニングラード、スターリ
ングラード、モスクワを陥落し、ソビエト連邦はもはや瀕死の状態。遅れて
やってきたパウルス将軍に、ソ連が講和を申し入れてきたと説明するゲー
リングも笑いが止まらない様子だ。2日前にソ連の特使が講和を求める
親書を携えてベルリンにやってきた。モスクワの提示した条件も悪くない。
皆、総統閣下の決断を待っていた。今まさにこの瞬間、その決断が公表
されようとしているのだ。

「講和条件を受諾する」
「ボルシェヴィキとの講和などありえん!」