2021/5/20 6:00 (2021/5/20 9:28 更新)

竹次 稔、福間 慎一

 愛知県知事のリコール(解職請求)運動を巡る不正署名事件でリコール活動団体事務局長らが逮捕された19日、昨年10月に佐賀市内で行われたとされる署名偽造のアルバイト参加者らは「犯罪の駒に使われた。全員に謝罪すべきだ」などと憤った。なぜ、書き写し作業が佐賀で行われたのか−。真相究明を望んでいる。

 「金を払っているんだから、ちゃんとしてくれ」。アルバイトに参加した福岡県内の個人事業主の40代男性は、事務局長の次男=地方自治法違反の疑いで逮捕=に似た人物が、佐賀市内の会議室で作業をせかしていたのを覚えている。
 その日、最前列で名簿の書き写しに従事していた男性は「そんな言い方はないだろう」と言い返した。4日間のアルバイト期間中、別の日にも廊下ですれ違ったと記憶している。
 男性によると、会場での最初の指示内容は「間違えないように」。だが日を追うごとに焦りがみられ、「早く書いてくれ」に変わっていった。
 「あの人たちは最初っからわれわれをだますつもりで、駒として使ったのか」。そう憤る一方で、知事を辞めさせるための“うそ”に加担した自身の行為を「正しいことをしていると説明され、信用してしまった。条件が良いバイトに安易に飛び付くべきではなかった」と後悔する。
 福岡県内の別の40代男性の携帯電話には2月に愛知県警から「どこの自治体の住所を書きましたか」と連絡があった。県警は「2日間、参加しましたね」と既に勤務日数も把握していたという。
 逆に質問すると、「600人ぐらいに電話している」と説明され「そんなに多くの人たちが九州で巻き込まれたのか」と驚いた。今回の逮捕を受け「なぜ、佐賀を会場として選んだのか明らかにしてほしい」と訴える。
 関係者によると、署名集めの依頼を受けたとされる名古屋市の広告関連会社が、もともと九州で仕事を行っていたのがきっかけだった可能性がある。会場の会議室の利用料は、佐賀市内の相場では低額に当たるという。 (竹次稔、福間慎一)

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