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さいたま市の清水勇人市長は二日、市議会二月定例会初日の施政方針演説で、浦和区にある市役所本庁舎について「合併三十年(の二〇三一年)をめどに、さいたま新都心への移転を目指す」と表明した。市庁舎移転の具体的な日程や場所に言及したのは初めて。市の誕生時から残る「宿題」がようやく動きだすが、旧浦和市域からは反発も予想される。 (前田朋子)
 市によると、移転先として示した「さいたま新都心バスターミナルほか街区」(大宮区北袋町一)は、さいたま新都心駅の南東約三百八十メートルにある市有地で、広さ約一万五千平方メートル。民間施設も入る複合ビルを検討し、完成時は駅と歩行者デッキで接続する。昨年六月に供用を開始したバスターミナルはそのまま残す。
 市の試算では、同街区への移転に伴う総工費は約二百六億円。市が積み立ててきた庁舎整備基金は新年度末で約六十五億円の見込みで、市債発行も検討する。

市庁舎を巡っては、合併前に浦和、大宮、与野の旧三市が交わした協定書に「さいたま新都心周辺地域が望ましいとの意見を踏まえ(略)検討する」との記載がある。一二年に設置された庁舎整備審議会が一八年五月、効率的な行政運営や災害対応の基準から「さいたま新都心駅周辺(半径八百メートル圏内)が望ましい」と答申。市はこれを基に今回の街区を含む三カ所を候補地に挙げていた。
 清水市長は閉会後の取材に、バスターミナル街区がコストやスケジュールの面で優位性があったと説明した。また、一九七六年完成の現庁舎跡地には、消防署と浦和区役所の機能を残した上で文化芸術や教育・先進研究、市民交流の拠点としての活用を想定。「市民の皆さんにいろいろお話を聞く必要がある」と述べた。
 旧浦和市域出身の市議からは「もろ手を挙げて賛成とはいかない」と戸惑いの声のほか、「(合併時から)職員も入れ代わり、市民の意識も変わった。将来的な街づくりを考えた議論がやっと進められる」と歓迎する声もあった。

東京新聞 2021年02月03日 07時11分