2018年10月2日

(写真)
(上)2008年9月のアサザ群落地の様子(下)同じ地点で撮影された2018年9月のアサザ群落地の様子=いずれも行方市で(アサザ基金提供)


 霞ケ浦の環境保全に取り組むNPO法人「アサザ基金」(牛久市)は一日、土浦市で会見を開き、霞ケ浦で見られていた自生のアサザの群落が確認できず、事実上消滅したと発表した。
基金は、国による水位管理に問題があるとみており、県に対応するよう求めた上で、十五日から県内で始まる世界湖沼会議で「議論するべきだ」と訴えた。 (水谷エリナ)
 アサザは国の準絶滅危惧種に指定される水生植物。秋や冬の乾燥により露出した陸に種子が定着し、発芽する。梅雨に水位が上昇すると、水面に葉を広げ、夏には黄色い花が咲く。
 基金によると、かつて霞ケ浦では日本最大のアサザの群落があり、唯一種子で繁殖できる場所だったという。かつて群落の総面積は
最大で東京ドーム一・六個分に当たる七・六万平方メートルほどあった。基金の代表理事の飯島博さんは「今年は、八月になっても群落が確認できなかった」と話す。
 国土交通省は水の安定供給のため、霞ケ浦下流に水門を設け、冬期に水位を上昇させている。これによってアサザが陸地で発芽できなくなり、群落がなくなったとみられる。
 アサザの減少は、水位上昇を始めた一九九六年から見られた。基金の要請を受け、国交省は二〇〇〇年にいったん中断した。しかし、県から再開の要望があり〇三年に徐々に水位を上げ、〇六年には元の水位上昇管理に戻したという。
 飯島さんは「水の供給に問題はなく、水位を上昇させる必要はない。水位上昇をやめれば、群落が戻る見込みはある」と指摘する。
 県生物多様性センターの担当者は「県では消滅を把握していない。情報が入り次第、確認、検討する」と話した。
 基金は湖沼会議前日の十四日、霞ケ浦の現状を議論することを目的としたシンポジウムをつくば市のつくばイノベーションプラザで開く。午後三時から午後六時までで、参加無料。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201810/CK2018100202000154.html