トークショーで校則について意見を交わす荻上チキさん(右)と内田良さん=東京都内
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 下着の色を指定したり、髪を黒く染めるよう強く求めたり。人権侵害にもなりかねない「ブラック校則」にどう立ち向かえばいいのか。校則の問題に詳しい評論家の荻上チキさんと名大大学院准教授(教育社会学)の内田良さんが、東京都内で意見を交わした。

 荻上さんと内田さんは、共に編著者となっている「ブラック校則 理不尽な苦しみの現実」(東洋館出版社)の刊行を受け、8月中旬にトークショーを開いた。

 荻上さんは賛同者らと今年2月、校則に関するアンケートを実施。15歳〜50代の人に中学・高校の校則について尋ねたところ、髪の毛を染めたり、パーマをかけたりしていないことを確認するための「地毛証明書」の提出や下着の色の指定など、さまざまな「ブラック校則」の実態が浮かんだ。

 ■より細かく規定

 荻上さんと内田さんが驚いたのは、昔はなかった校則が新たに生まれたり、規定がより細かくなったりしていることだったという。二人はその要因として、教員の多忙化や学校選択制による学校間競争などで、「効果が分かりやすい生徒指導」である校則が選ばれている、と推測した。

 内田さんは「いったんルールを決めると、『あれ、あんただけちょっとおかしいよ』『みんなに合わせろ』となる。すべて自由にしてしまえば何も気にならないし、管理する手間も省ける」と語り、校則の見直しが教員の負担軽減にもつながると指摘した。荻上さんは「学校は子どもが社会に出るために、『何が合理的か』を問い続けていく場所にしなければならない。不条理に慣れさせる場所ではない」と指摘した。

 ■「原因は社会に」

 会場からは、教員や「元生徒」の立場からさまざまな意見が出た。

 神奈川県内の高校教諭の男性(57)は、「学校関係者以外からクレームがくると、管理職や教頭・校長が(学校を)よく見せようと思い、さらに校則が細かくなるスパイラルがある。校則がきつくなる一つの原因は社会にあるのではないか」と指摘した。

 千葉県の女性(33)は自分が通っていた高校で、授業中にトイレなどで教室から出ると、戻ってくる時に職員室で「再入室許可証」をとらなければならなかったことを紹介。「生徒の学ぶ権利を奪っているのではないか」と感じているという。

 参加者からは「生徒たちが立ち上がるにはどんなアクションがいいか」という質問もあがり、荻上さんと内田さんは「生徒総会で議題に挙げてはどうか」「先生は『自主性』という言葉が大好きなので、それを逆手に校則を作っていけばいい」などと提案した。

 ■都立高の6割「地毛証明」

 校則をめぐっては2017年9月、大阪府立高校の女子生徒が、生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう指導されて不登校になったとして、府を提訴。朝日新聞の昨年の調査では、都立高校の約6割が一部の生徒に「地毛証明」を提出させていることもわかった。

 昨年12月、NPO法人の理事長や荻上さんらが中心となってインターネットで設立した「『ブラック校則をなくそう!』プロジェクト」を発表。署名活動も始め、校則の見直しを求める林芳正・文科相宛ての署名は、現在4万を超えるという。

 林文科相は今年3月の参院文教科学委員会で校則について問われ、「学校を取り巻く社会環境や児童・生徒の状況の変化に応じて、絶えず積極的に見直す必要がある」としたうえで、「見直しの際には、児童・生徒が話し合う機会を設けたり、保護者からの意見を聴取したりするなど、児童・生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決定するということが望ましい」と答弁している。(田中聡子)

朝日新聞デジタル 2018年9月26日05時00分
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