【いきもの目線】カブトガニ@笠岡市立カブトガニ博物館=2018年5月14日、竹谷俊之撮影
写真・図版
カブトガニの腹部はまるでエイリアン。中央は口=竹谷俊之撮影
360度いきもの目線
「ようこそ笠岡へ カブトガニの街へ」
岡山県にあるJR笠岡駅前ロータリーに降り立つと、こんな巨大な看板が迎えてくれる。笠岡市にある干潟はカブトガニの繁殖地、国の天然記念物に指定されている。海辺にある「市立カブトガニ博物館」は、建物自体がカブトガニの形だ。
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カブトガニといえば、ツルツルしたおわん型の体に、カニのようにもクモのようにも見える脚。長い尾を引きずって歩くこの不思議な生き物を、さてどうやって撮影しよう。
博物館の水槽は、深さ1メートル。水底に360度カメラを設置しようと、プラスチック製のマジックハンドを持って訪れたが、カメラがすべって四苦八苦。希少生物の水槽に潜るわけにもいかないし……。
困り果てていると、学芸員の東川洸二郎さんが、手持ちの木材で「巨大な洗濯ばさみ」を作ってくれた。なんとか撮影開始できそうだ。今回は、この不思議な生物の専門家に、詳しく話を聞いてみることにした。
東川さん、カブトガニって食べたらどんな味がしますか?(竹谷俊之)
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カブトガニに会いに来ませんか――カブトガニ博物館学芸員・東川洸二郎
ヘルメットのような頭に、トゲだらけの体。スラリと伸びた丈夫なしっぽ。カブトガニは、約2億年前から姿を変えていない「生きている化石」です。ここは、カブトガニをテーマにした世界で唯一の博物館。岡山県の西部、広島県と接する笠岡市にあります。
丸くてかわいい、おとなしい生き物ですが、サイズは意外と大きめです。初めて見た人は、よく「でかッ!」と言います。メスは60センチで3キロ。オスは50センチで1・5キロほどにもなります。
カブトガニっておいしいの?
来館者からの質問の中でも、特に多いのがこの質問。「カブトガニってカニの仲間だから、おいしいんですよね?」
答えはノー。
そもそも、カニの仲間ではありません。「節足動物」という昆虫やエビ、カニなどが入るグループの中で、分類すると、クモやサソリの仲間に近い生き物です。
海にすむ大きなクモ……。中国などで食用にされている部分はメスの卵です。味を想像してみてください。私は残念ながら食べたことがありませんが、聞いた話では独特の臭みとグニョグニョとした食感で日本人の舌には合わないようです。
→【動画】カブトガニの撮影現場の様子=2018年5月14日、竹谷俊之撮影
もし、日本人にとってカブトガニがおいしければ、今頃日本のカブトガニは絶滅していたかもしれませんね。
「カブトガニは何を食べるの?」とも、よく聞かれます。何だと思いますか。
実はカブトガニは、夏に生まれてから翌年の春までの間、何も食べません。この時期は体長はほんの6mmほど。暖かくなった頃、1回脱皮をして一回り大きくなり、尾剣(びけん:しっぽのこと)がちょこんと生えてくると、ようやくエサを食べるようになります。
最初のうちは、主に微生物。大きくなるにつれて、泥の中にすむゴカイなどを食べるようになります。
飼育しているとわかりますが、実は何でもよく食べる生き物で、アサリやイカ、エビ、魚の切り身など、海にいる生き物ならモリモリ食べてくれます。
グルメなカブトガニもいます。奮発して買ったキンメダイを与えても、食べない個体がいます。安物のオキアミが好きな個体もいて、個性もいろいろ。みんなが共通して好きなエサはゴカイ、これは食いつき方が違います。
体が大きくなる分、力も強く、今回の撮影では、苦労して設置したカメラをひっくり返したり、砂をかけて埋めたりと、なかなか思い通りにはいきませんでした。
「青い血」が人間を救う?
===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://www.asahi.com/articles/ASL6W44ZDL6WUEHF00M.html