寂庵の庭に立つ瀬尾まなほさん。本のタイトルは編集者の案といい「私は『先生大好き!』みたいなのを考えていたんですが」と笑う=京都市右京区
http://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201801/img/b_10871373.jpg
「おちゃめに100歳!寂聴さん」
http://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201801/img/b_10871372.jpg

 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(95)の秘書を務める瀬尾まなほさん(29)が、66歳も年が離れた「先生」との日々を記した「おちゃめに100歳!寂聴さん」(光文社)を出版した。何も知らず飛び込んだ世界で寂聴さんに真正面からぶつかり、互いに信頼を深めていく7年の歳月を若々しい言葉でつづり、順調に版を重ねている。(新開真理)

 瀬尾さんは神戸市東灘区生まれ。父親の仕事の関係で出石町(現豊岡市)や朝来市で育った。

 友人の紹介を受け、京都外国語大の卒業に合わせ、著作を読んだこともない寂聴さんが暮らす「寂庵(じゃくあん)」(京都市右京区)に就職。現在は秘書として依頼が絶えない仕事のスケジュールを管理し、日常生活を支える一方、「まなほの寂庵日記」と題した連載を、共同通信を通じて神戸新聞などで続けている。

 「おちゃめに−」は、寂聴さんが発行する「寂庵だより」に書いたリポートを目にした編集者から打診があり執筆。「自分らしい言葉が見つかると『いいんじゃない』とうれしくなったり、気持ちが入りすぎて『酔ってる』と反省したり」しながら完成させた。あらためて「筆一本で生き、95歳の今も高みを目指す先生のすごさを感じた」と語る。

 ニンジンが苦手で、テレビを見ては文句を言い、「悪口や噂(うわさ)話も大好き」。身近な人だけが知る作家の素顔を、親しみやすい文章で紹介する。度重なる闘病を支え、さまざまな経験を重ねる中で、「私なんか」が口癖だったという瀬尾さんが「先生がいるから無敵」と自信をつけていく姿もつづられる。

 一つ屋根の下で暮らす寂聴さんは「気分の人。日々、言うことが変わるので振り回されています」とさらり。けれど「いつも笑顔で凜(りん)としていて、情が深くて…。7年も近くにいるのに、どんどん好きになっていく」と親愛の情を抱く。

 出版から1カ月余りで既に3刷目。瀬尾さんは「若い人に読んでもらえたら。そして次に、ぜひ先生の本を手に取ってほしい」と願う。

 四六判272ページ、1404円。

神戸新聞NEXT 2018/01/05 14:52
http://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201801/0010871371.shtml