この夏、川遊び中の高校生が石造りの仏像を見つけた。
合掌する地蔵菩薩像(ぼさつぞう)とみられ、
表面には長く水中にあったためか、水生生物がくっついていたような跡がある。
現在は高校生の祖父で、同市立花町谷川の平嶋千秋さん(82)が保管している。
豪雨での流出か、堤防工事の安全祈願か、
地域住民は謎の仏像についてあれこれと想像を巡らせている。
仏像は高さ41センチ、幅20センチ、重さ約10キロ。
黒っぽい石に地蔵尊と日輪のような円が彫られている。
銘文はない。
平嶋さんによると、7月に孫の女子生徒が千間土居公園で友人と水遊びをしていた時に、
中川原橋付近の水深約45センチの川底に仏像を見つけた。
ゴーグルで川の中をのぞくと、仏像と目が合ったかのように感じたという。
友人たちと川から引き上げた後、近くの土手から転がり落ちたのではないかと探したが
そのような痕跡は見つからず、その場に置いていた。
帰宅して家族に話すと「2012年の九州北部豪雨で上流から流されてきたのでは」と言われ、
持ち帰って保管することになった。
仏像について、かつて暴れ川と言われた矢部川の治水工事の安全を祈願するため、
水中に供えられたものではないかと推測する人もいる。
千間土居公園は、江戸時代に柳川藩が築いた約2・3キロの堤防を活用してできた。
工事を指揮した田尻惣馬(1678〜1760)は何とか成功させるため、
自ら嵐の日に「はんぎり」と呼ばれるたらいに乗って流れを探る情熱の持ち主である一方で、
対岸の久留米藩から苦情が出ないよう、短期間で工事を済ませるため、
動員した農民を一切休ませず「鬼奉行」と恐れられた。
「皆が命がけだった堤防工事を成功させるため供えられたのでは」という考えだ。
実際、千間土居公園より下流には、護岸工事が難航したため、
しきたりに従い命を投じた村の女児の遺徳をしのぶ「延命地蔵尊」もある。
八女市教委によると、現在のところ九州北部豪雨や7月の九州豪雨で
上流部の寺院や地蔵堂が被害を受けたとの報告はないという。
公園近くの寺院の住職も「これまで見たことがない仏像」と首をかしげる。
仏像を保管している平嶋さんは「どういうお地蔵様なのか早く知りたい」と手掛かりを求めている。
写真:矢部川の底から見つかった仏像(左)と、保管している平嶋千秋さん
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写真:仏像が見つかった矢部川の中川原橋付近
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以下ソース:西日本新聞 2017年09月21日 06時00分
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_chikugo/article/360149