島根県大田市久手町の国道9号沿いで70歳代の夫婦が営んできた珈琲館「Spin(スピン)」が昨年末、閉店した。

1985年に宝くじ売り場を併設して以来、高額当選が何度も出た知る人ぞ知る「宝くじファンの聖地」。
閉店直前の年末ジャンボでは1等・前後賞合わせて10億円の当選が出て有終の美を飾った。
夫婦は「何とも言えないほどお客さんに感謝している」と話している。

Spinは同市出身の店主大西紀一さん(73)と、京都市出身の妻、泰子さんが73年に開業。
運転の疲れを癒やすトラック運転手やサラリーマンらに親しまれた。
常連客から「近くにないから」と求められて、宝くじ売り場を併設。
地元だけでなく、鹿児島や北海道などのナンバーが付いたトラックの運転手らが休憩ついでに購入し、
「街中はトラックを止められないから」と、いつもここで買う人もいたという。

話好きな泰子さんが売り場を担当するうち、客の間で「よく当たる」と評判に。
93、95年の年末ジャンボや97年のサマージャンボで1等当選が出て、2010年も年末ジャンボで2等が2本。
「100万円レベルの当選はしょっちゅう」(泰子さん)だったという。

しかし、年齢とともに喫茶店を営むのが厳しくなり、余力があるうちにと、昨年12月31日で閉店した。

その数日後。店に忘れ物を取りに行くと、1本の電話があった。
泰子さんが取ると、男性が「ありがとうございました」と言って切れた。
その後、みずほ銀行から、最後の販売となった年末ジャンボ宝くじで、
Spinの売り場から、1等(7億円)が1本、1等前後賞が2本(1本1億5000万円)出たとの連絡を受けた。

同行宝くじ部によると、昨年の年末ジャンボは全国で1等が16本、1等前後賞が30本出たが、
県内では1等、前後賞ともSpinだけだったという。

大西さん夫婦は宝くじを通して時代の変遷も見てきた。
当初は購入者のほとんどが男性だったが、最近は社会進出のためか、女性が増加。
地元で働く日系ブラジル人も買いに来たという。

泰子さんは
「『当たってほしいなー』と願いながら、お客さんと一言二言話しているうちに、おしゃべりが大好きになった」と言う。

「せっかく1等が出ましたが 平成28年末をもちまして廃業いたしました。これまでのご愛顧に感謝いたします」。
知らずに訪れた人のために、閉店から7か月が過ぎた今も、売り場前に貼り紙が残る。

泰子さんは語る。
「この商売で多くの人と出会い、最後に夢を持ってもらえて良かった。皆さんに幸がありますように」

写真:閉店した珈琲館Spin。宝くじ売り場から、何度も高額当選が出た
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20170819/20170819-OYT1I50045-L.jpg

以下ソース:YOMIURI ONLINE 2017年08月20日 09時13分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170819-OYT1T50098.html