そもそも純粋な男系主義からいえば、皇室の男系継承は不完全な亜流でしかない。
中国・朝鮮で男系主義が尊ばれた所以は、その家の血統の純潔性を保持するためでもあり、
そのため、夫婦は別姓でたがいに血筋を明らかにしている。
ところが天皇家は男系を維持するため、わざわざ皇族のあいだで婚姻を繰り返してきた。
これは中国・朝鮮の純粋な男系主義からすれば、犬猫同然の所業のタブーである。
中国・朝鮮からすれば、皇室の男系主義はその本質の意味を喪失しているばかりか、
むしろ侮蔑の悪行ですらある。
将来、日中関係が悪化すれば、中国が天皇家の権威を貶めるため、この点を指摘してくる可能性さえある。
 ヨーロッパの王室でも男系を維持するため、同族間の近親婚が繰り返されてきた。その結果、
王族のあいだでは、ハプスブルク家の下顎前突症など、遺伝性の病気が頻発した。
 現在、ヨーロッパの王室のほとんどは女系を容認している。これは王位の安定継承をはかる意義とともに、
男系継承への固執がもたらす劣性遺伝の負の側面の認識もあったと思われる。
 縄文時代においては、土偶にみられるように、女性は大変尊重されていた。
生命を生み出す源として、むしろ女性は男性より神に近い存在と考えられていた。 
皇室の男系継承は、漢籍などともに渡来した中国思想の影響によるものである。
しかし、それでも縄文からつづく女性尊重の風土は消し去ることはできず、女帝の卑弥呼やアマテラスにみられるように、
皇室の男系主義は中国の純粋なものとはなりきれず、亜流の不完全なものとなった。
 皇位の男系継承を我が国の絶対の原理だと主張するのは、中国語の漢字を日本固有の文字だと思い込むのに等しい。
 男系維持派は日本の歴史・伝統を尊ぶべきだと主張するが、歴史・伝統を尊ぶなら、縄文の日本の源流の時代にまでさかのぼるべきである。
 女子に幼児期より足に布を巻かせ、足が大きくならないようにするという非人道的な纏足の文化をもった中国とは異なり、
日本人は古代より女性を大切に扱ってきたのである。
 東宮家に愛子さまというご立派な長子がおられるのに、その皇位継承権を認めず、
700年も血筋が離れた旧皇族を皇籍復帰させることは、かえって世界における天皇家の権威を貶め、
ひいては日本民族のアイディンティティーを喪失せしめる結果を招くものと思われる。