米紙「ニューヨーク・タイムズ」(中国語電子版)によると、昨年1年間で、カナダに滞在して出産した中国人女性の数は1500〜2000人に上るなど、中国人妊婦によるカナダでの出産ツアーが急増している実態が明らかになった。カナダ国内で生まれれば、カナダ国籍を得ることが可能だということが背景にある。大人になってからカナダ国籍を取得するのは容易なことではない。

 中国人妊婦の出産ツアーは中国から近い米国の自治領、サイパンやグアムなどが主だった。だが、近年、米政府当局の規制が厳しくなっていることから、入国審査や移住の基準が比較的緩やかなカナダが出産ツアー地として狙われているようだ。これに対して、カナダ国内では「カナダは市民権を買えるショッピングセンターではない」などの批判が出ているという。

 中国で出産渡航代理店を7店舗経営している中国人男性は同紙の取材に対して、中国人の妊婦は、出産予定日のほぼ1カ月前のタイミングでカナダに到着し、病院に入院し出産。その後の静養期間を含め約3カ月間、カナダに滞在するという。

 代理店側は女性が出産後、赤ちゃんのパスポートの申請を代行するなどして、滞在費や入院費、その他の諸費用などを含めて全部で2万5000米ドルを請求する。カナダ国籍を取得した赤ちゃんはほぼ全員が中国に帰り、成人前に父母ら家族とともに、カナダを訪問し、高校や大学に入学するという。

 同紙の取材を受けた客室乗務員の中国人の妊婦はカナダで出産した理由について、「多額の出産費用は子供の教育のための投資。カナダは中国よりも自然環境や社会環境が抜群に良いからです」と述べている。

 また、この女性は「夫は航空会社のパイロットだが、中国でお金をためて、カナダでの生活資金にして、息子をカナダの高等教育機関にいれてカナダに定住するのが夢」と語っている。

 前出の代理店経営者は「カナダ国籍を持っていれば、中国から留学するよりも簡単で、なおかつ安い費用で、現地カナダ人として、高校や大学、大学院などの高等教育機関で学ぶことができる」と指摘する。

 同紙によると、カナダのブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市は住民の半分以上の20万人が中国出身者やその家族で占められているほか、同市内で出産する妊婦の5人に1人が同市市民ではないという。

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