2018-05-29 07:00
 現地時間19日に行われた『第71回カンヌ国際映画祭』授賞式で、コンペティション部門で最高賞・パルムドールを受賞した是枝裕和監督作品『万引き家族』
(6月8日公開)。日本映画では1997年の今村昌平監督作品『うなぎ』以来、21年ぶりの快挙を成し遂げた同作において、
プロデューサーを務めたフジテレビ・松崎薫氏がインタビューに応じ、その制作の裏側を明かした。

 同作は、さまざまな“家族のかたち”を描き続けてきた是枝監督が、この10年間考え続けてきたことを全部込めたと語る渾身作。
東京の下町で質素に暮らす、一見ありふれた家族。しかし、彼らは生計を立てるため、家族ぐるみで軽犯罪を重ねていたのだった。
犯罪でしかつながれなかった家族の“許されない絆”が、ある事件をきっかけに衝撃の展開を迎える。

 是枝監督と松崎氏とのタッグは『そして父になる』(2013)、『海街 diary』(2015)、『海よりもまだ深く』(2016)、『三度目の殺人』(2017)に続く5度目。
是枝監督作の魅力は“是枝マジック”と呼ばれる編集の緻密さがキモだという松崎氏は「たくさん撮るんですけど、大胆に編集するんです。その作り上げていく過程もすごいなと思う。
きちんと模索して、思い切り余計なものを切り捨てる。そのプロセスで仕上げていくものが素晴らしいものに仕上がる」と感嘆の声を漏らす。

 今回の作品に10年の構想をかけたという是枝監督だが、具体的に松崎氏に提示されたのは『三度目の殺人』の前後。「『海よりもまだ深く』で、是枝監督も家族について『やりきった感がある』
とおっしゃっての『三度目の殺人』だった。私としては、『誰も知らない』(2004)のような社会派のにおいがするものをやってみたらどうかというのがあって…。
『三度目の殺人』の後にも、新しいことにいくかと思っていたけど、家族というものを媒介として社会を見るという形になったので理想的な作品だと思いました」。

 『そして父になる』以降の作品からは、さらにその「成熟度が増した」と松崎氏。「是枝監督は社会を糾弾する意味をもって映画をつくっていらっしゃらない。
『海よりもまだ深く』や『歩いても歩いても』(2008)はパーソナルな“家族の物語”として完結してるけど、『そして父になる』や今回の作品は、そこに社会が透けている部分がある。
そういうものも賞に結びついたかなと思います」と分析する。「(『そして父になる』以降の)5作だけでなく、『誰も知らない』
(2004)から積み重なった是枝監督の“真骨頂”。きちんと成熟した形で着地している」とその完成度に自信を込める。

 是枝監督は同作について「そっと観たい人に提供したい作品」という想いを込め、宣伝の際も「感動」を前面に打ち出すことは否定的だった。
ポスタービジュアルでは出演者のリリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林らが笑顔を浮かべた和やかな“家族写真”に
『万引き家族』というセンセーショナルなタイトルが印象的だが、実はもうひとつのタイトル案があった。

 それは『声に出して呼んで』。是枝監督による当初の脚本では『万引き家族』だったものの、途中からこのタイトル案を提示されたという。
松崎氏はこのタイトルも「とってもすてきで個人的には気に入っていた」が、「なかなか伝わりにくい。なんの話かわからないので、
もう少しわかりやすいタイトルにしたい宣伝側のリクエストとしてお願いしました」と変更の経緯を明かす。

 是枝監督が納得するきっかけとなったのが、まさにこのポスタービジュアルだ。「ポスタービジュアルに載せてようやくご納得していただきました。
良い家族写真が撮れて、にこやかな感じの上に『万引き家族』とタイトルがつくと、ちょっとギャップがある感じ。その前に海外では先にポスターをつくっていたんです。
結局変わってしまったのですが『SHOPLIFTERS』(万引きする人々)というタイトルに載せるとちょっとよかったんです。こどもが万引きしてくるみたいなニュアンスで。
英語のタイトルで先に監督が納得していただいた形です。映画としてはなるべくわかりやすくしたかった」と紆余曲折の末、現在のタイトルに落ち着いた。

     ===== 後略 =====
全文は下記URLで

https://www.oricon.co.jp/news/2112319/full/
(最終更新:2018-05-29 07:00)